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シニア向け筋トレ完全ガイド|60代から始める健康寿命を伸ばす運動

2026.07.04
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「階段の上り下りがきつくなった」「最近、なんでもない段差でつまずく」「親が将来歩けなくなるのではと心配」——。60代のご本人にとっても、親世代を気づかうご家族にとっても、こうした不安は身近なものです。

結論からお伝えします。60代から始める筋トレの目的は、「見た目を引き締めること」以上に、「健康寿命=自分の足で、自分らしく生きられる期間」を伸ばすことにあります。そして、筋肉は何歳からでも、適切に働きかければ応えてくれる組織です。「もう歳だから」とあきらめる必要はありません。

この記事では、東大薬学部卒・薬剤師国家資格を持つトレーナーの視点から、サルコペニア・フレイル・ロコモといった「老化と筋肉」のしくみをやさしく整理し、60代から自宅で安全に始められる筋トレメニュー、無理なく続ける頻度、効果を支える食事(たんぱく質)までを体系的に解説します。

健康・医学の領域には誤った情報も少なくありません。本記事は、厚生労働省 e-ヘルスネットや日本整形外科学会などの公的・学術情報に紐づく内容を中心に、誇張せず、誠実にお伝えします。持病のある方は、運動を始める前にかかりつけ医へのご相談をおすすめします。

トレーナー指導のもと運動する50代男性

目次

なぜ60代に筋トレが必要なのか|「健康寿命」という考え方

60代の筋トレを考えるとき、まず知っておきたいのが「健康寿命」という考え方です。ここを理解すると、筋トレが「将来の自分への投資」であることが見えてきます。

平均寿命と健康寿命の差を知る

「寿命」には2つの意味があります。

  • 平均寿命:命がある期間の平均(亡くなるまでの長さ)
  • 健康寿命:介護などを必要とせず、日常生活を自立して送れる期間

厚生労働省 e-ヘルスネットによると、2022年(令和4年)の健康寿命は男性72.57歳・女性75.45歳、平均寿命は男性81.05歳・女性87.09歳です。

ここで注目したいのが、この2つの差です。

  平均寿命 健康寿命 差(日常生活に制限のある期間)
男性 81.05歳 72.57歳 約8.49年
女性 87.09歳 75.45歳 約11.63年

つまり、男性で約8.5年、女性で約11.6年は、なんらかの形で日常生活に制限を抱えて過ごす計算になります(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」)。

この差をできるだけ縮め、「自分の足で動ける期間」を長くすること。これこそが、60代からの運動の大きな目的です。

筋肉は25〜30歳から減り続ける(サルコペニア)

「最近、力が出ない」「歩くのが遅くなった」と感じる背景には、加齢による筋肉量の低下があります。これを医学的にはサルコペニアと呼びます。

サルコペニアとは、「高齢期にみられる骨格筋量の低下と、筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下」を指します。注目すべきは、骨格筋量の低下は25〜30歳頃から始まり、生涯を通じて進行していくという点です(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」)。

主な原因は加齢ですが、それだけではありません。活動不足・病気・栄養不良も危険因子とされています。逆に言えば、加齢以外の部分には、私たちが働きかけられる余地があるということです。

薬剤師トレーナーの視点では、筋肉は「使わなければ静かに減っていく」組織です。骨が折れて数週間ギプスで固定するだけでも、その部分の筋肉はやせ細ります。60代で「動く機会」が減ると、この自然な減少に拍車がかかります。だからこそ、意識的に筋肉へ刺激を入れることに意味があるのです。

サルコペニア・フレイル・ロコモの違いをやさしく整理

ニュースや健康番組で「サルコペニア」「フレイル」「ロコモ」という言葉を見かけても、違いが分かりにくいものです。ここで一度、整理しておきましょう。

用語 やさしい言い換え 中心となるもの
サルコペニア 筋肉がやせ細る状態 筋肉量・筋力の低下
ロコモ(ロコモティブシンドローム) 立つ・歩く機能が衰えた状態 運動器(筋肉・骨・関節)全体の障害
フレイル 心身が弱り、要介護の手前にある状態 体・心・社会的なつながりを含む全体的な虚弱

少しかみ砕くと、こうイメージできます。

  • サルコペニアは「筋肉」にフォーカスした言葉。
  • ロコモは、筋肉に加えて骨や関節も含めた「移動する力」全体の問題。2007年に日本整形外科学会が提唱しました。進行すると将来介護が必要になるリスクが高まるとされています(出典: 日本整形外科学会「ロコモティブシンドローム」)。
  • フレイルは、さらに広く心や社会的なつながりまで含めた「全体的な弱り」。健常と要介護の中間にあり、多くの高齢者はこの段階を経て要介護へ進むと考えられています(出典: 健康長寿ネット「フレイルとは」)。

日本整形外科学会は、自分で気づくための「ロコチェック」(7項目のうち1つでも当てはまればロコモの心配あり)も公開しています。「片脚立ちで靴下がはけない」「家の中でつまずく・滑る」「階段を上るのに手すりが必要」などが該当します(出典: ロコモONLINE「ロコチェック」)。気になる方は一度チェックしてみてください。

朗報:フレイルは適切な対策で戻りうる(可逆性)

ここで、もっとも大切なメッセージをお伝えします。

フレイルは、適切な介入や支援によって、生活機能の維持・向上が可能とされています。 つまり、早めに気づいて対策をすれば、健常な状態に戻りうる「可逆性」があるのです(出典: 健康長寿ネット「フレイルとは」)。

「歳をとったら衰える一方」というイメージは、必ずしも正しくありません。適切な運動と栄養を組み合わせることで、状態を上向きにできる余地がある——これは、60代からの取り組みに希望を与えてくれる事実です。

薬剤師トレーナーの視点では、「可逆性がある」という点が60代の運動を考えるうえで決定的に重要です。だからこそ、筋トレは「もう手遅れ」ではなく「今からが分かれ道」。今日の小さな一歩が、数年後の自立につながっていきます。

60代の筋トレで期待できる健康効果

健康診断の結果を見る50代の日本人男性

では、60代で筋トレを行うと、具体的にどんなことが期待できるのでしょうか。ここでも公的情報に沿って、誠実に整理します。なお、効果には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではない点を、はじめにお断りしておきます。

転倒・骨折の予防につながる(下肢筋力・バランス)

高齢期に特に怖いのが、転倒による骨折です。骨折をきっかけに寝たきりや要介護につながるケースは少なくありません。

レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)は、転倒予防や基本動作能力の改善に効果があるとされています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」)。太ももやお尻、ふくらはぎといった下半身の筋力、そして体を支えるバランス能力を養うことが、転倒のリスク低減につながると考えられています。日々の動きを支える太ももや体幹の筋肉は、いわば「転ばないための保険」。ここを保つことが、骨折につながる転倒そのものを減らす第一歩になります。

また、骨折を防ぐうえでは「骨」そのものへの配慮も欠かせません。特に女性は閉経後に骨密度が下がりやすく、骨粗鬆症は骨折のリスク要因とされています。運動による適度な刺激は骨の健康を保つ観点からも大切と考えられており、筋力・バランスで「転びにくくする」ことと合わせて意識したいポイントです。なお、骨密度に不安のある方や骨粗鬆症と診断されている方は、運動の内容について事前に医師へご相談ください(出典: 日本整形外科学会「ロコモティブシンドローム」)。

基礎代謝・生活習慣病対策

筋肉は、体の中でエネルギーを多く消費する組織のひとつです。筋肉量を保つことは、基礎代謝(じっとしていても消費されるエネルギー)を維持することにもつながります。基礎代謝を落としにくい毎日の習慣については、基礎代謝を上げる生活習慣の記事でも詳しく解説しています。

60代になると、男性は特にお腹まわりの脂肪や生活習慣病が気になり始める方が多いものです。筋トレと有酸素運動を組み合わせる習慣は、体型の維持や健康管理を支える土台になります。

自立した生活=要介護を遠ざける(ロコモ予防)

立つ・歩く・座るといった日常の動作は、すべて筋肉に支えられています。下肢の筋力やバランスを保つことは、ロコモの予防、ひいては「自分のことは自分でできる」自立した生活を守ることにつながります。

買い物に行く、旅行を楽しむ、孫と遊ぶ——こうした「やりたいこと」を続けられる体を保つことが、健康寿命を伸ばす実感につながっていきます。

「もう歳だから」は誤解|高齢でも筋肉は応える

「この歳から鍛えても無駄では?」と感じる方も多いでしょう。しかし、これは大きな誤解です。

レジスタンス運動は、高齢者でも筋量・筋力の向上が期待できるとされています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」/健康長寿ネット「高齢者の運動」)。若い頃と同じスピードとはいかなくても、筋肉は何歳からでも、適切な刺激にきちんと応えてくれる組織です。

薬剤師トレーナーの視点では、「歳だから筋肉は増えない」という思い込みが、いちばんもったいないブレーキです。実際には、80代・90代を対象にした研究でも筋力向上の報告があります。スタート地点は人それぞれですが、「今より良くなる余地」は、年齢に関係なく残されています。

【実践】60代から始める自宅筋トレメニュー(自重)

ここからは、自宅で安全に始められる自重(自分の体重を使う)メニューを紹介します。器具は不要です。まずは無理のない範囲で、フォームを丁寧に行うことを優先してください。

共通ルール:すべての種目で呼吸を止めないこと。動作に合わせ、力を入れるときに「フーッ」と息を吐きます。痛みが出たらすぐ中止し、不安があれば壁・椅子・手すりなど支えを使ってください。持病のある方は、開始前にかかりつけ医へご相談を。効果には個人差があります。

下半身を鍛える(土台づくり)

下半身は「立つ・歩く」の土台であり、サルコペニア・ロコモ対策の最重要パートです。

① 椅子スクワット(イス立ち座り)

  • 回数: 5〜10回 × 1〜2セット
  • 狙う筋肉: 太もも前・お尻
  • 効くポイント: 椅子の前に立ち、ゆっくり座って、ゆっくり立つ。膝がつま先より大きく前に出ないように。不安な方は浅く腰を下ろすだけでもOK。
  • NG例: 反動で勢いよく立つ / 膝が内側に入る

② 自重スクワット(慣れてきたら)

  • 回数: 5〜10回 × 1〜2セット
  • 狙う筋肉: 太もも・お尻・体幹
  • 効くポイント: 足を肩幅に開き、椅子に腰かけるイメージでお尻を後ろへ。膝が痛む場合は深く下げない。
  • NG例: かかとが浮く / 背中を丸める / 痛みを我慢する

③ かかと上げ(カーフレイズ)

  • 回数: 10〜15回 × 1〜2セット
  • 狙う筋肉: ふくらはぎ
  • 効くポイント: 壁や椅子の背に手を添え、かかとをゆっくり上げ下げ。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、巡りのサポートにも。手足の冷えが気になる方は、冷え性と運動・食事の記事もあわせてご覧ください。
  • NG例: 反動でガクンと下ろす / バランスを崩したまま続ける

④ もも上げ(その場で)

  • 回数: 左右各10回
  • 狙う筋肉: 太もも前・股関節まわり
  • 効くポイント: 椅子に座る、または壁に手を添えて立ち、片方の太ももをゆっくり持ち上げる。歩く力の維持に役立ちます。
  • NG例: 上体を後ろに倒して反動を使う

体幹・姿勢を整える

体幹(お腹・背中)は姿勢を支え、転びにくい体づくりの基礎になります。

⑤ ドローイン(お腹の引き締め)

  • 回数: 5〜10秒キープ × 5回
  • 狙う筋肉: お腹の深層(腹横筋)
  • 効くポイント: 仰向けまたは座位で、息を吐きながらお腹をへこませ、その状態を保つ。呼吸は止めない。
  • NG例: 息をこらえて力む / 腰を反らせる

⑥ 壁腕立て(ウォールプッシュアップ)

  • 回数: 5〜10回 × 1〜2セット
  • 狙う筋肉: 胸・腕・肩
  • 効くポイント: 壁から一歩離れて両手をつき、肘を曲げて体を壁に近づけ、押し返す。床で行う腕立てより安全で、上半身を無理なく鍛えられます。
  • NG例: 腰が反る・落ちる / 肩をすくめる

バランス能力を養う(転倒予防)

⑦ 片脚立ち

  • 時間: 左右各10〜30秒(できる範囲で)
  • 狙う力: バランス能力・下肢の支持力
  • 効くポイント: 必ず壁や椅子のそばで、いつでもつかまれる状態で行う。片脚を軽く浮かせ、ぐらつかない時間を少しずつ伸ばす。
  • NG例: 支えのない場所で行う / 無理に長く頑張る

日本整形外科学会も、片脚立ちは手軽なロコモ対策の運動(ロコトレ)として紹介しています。転倒に十分注意して行ってください。

有酸素運動も組み合わせる(ウォーキング)

筋トレと合わせて、ウォーキングなどの有酸素運動も取り入れましょう。厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者は歩行または同等以上の身体活動を1日40分以上(週15メッツ・時以上)行うことが推奨されています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」)。

いきなり40分が難しければ、10分の散歩を数回に分けても構いません。「少し汗ばむ」「会話はできるが息が弾む」くらいが目安です。

薬剤師トレーナーの視点では、高齢者に最も推奨されるのは、筋力・バランス・有酸素などを組み合わせた「多要素な運動(マルチコンポーネント)」です。ガイド2023でも、こうした多要素な運動を週3日以上取り入れることが勧められています。一種目だけに偏らず、「鍛える・支える・歩く」をバランスよく続けることが、転倒予防にも自立にもつながります。

60代の筋トレ「頻度・強度・続け方」

生活習慣改善をサポートするパーソナルトレーナー

「どれくらいやればいい?」という疑問にお答えします。ポイントは、頑張りすぎないことです。

週何回がいい?

厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023では、筋トレ(レジスタンス運動)は成人・高齢者ともに週2〜3日が推奨されています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「筋力トレーニングについて」)。

筋肉は、トレーニングで受けた刺激から回復する過程で整えられていきます。そのため、毎日同じ部位を追い込むより、間に休養日をはさんで週2〜3回行うほうが理にかなっています。「月・木」「月・水・金」のように、曜日を決めると習慣にしやすくなります。

きつさより継続|「ややきつい」を目安に

60代の筋トレでは、「どれだけきついか」より「無理なく続けられるか」が大切です。強度の目安は、「ややきつい」と感じる程度。歯を食いしばるような高負荷は必要ありません。

「もう少しできそう」というところで、あえて1〜2回残して終えるくらいがちょうど良いものです。痛み・強い息切れ・めまいを感じたら、その日は中止してください。

続けるコツ(記録・ながら・伴走)

続けるための工夫を、いくつかご紹介します。

  • 記録する:カレンダーに「○」をつけるだけでも、達成感が積み重なります。
  • 生活に組み込む:歯みがき中にかかと上げ、テレビを見ながらもも上げなど「ながら」で。
  • 仲間や伴走者をつくる:一人だと続かない方は、家族と一緒に、あるいは専門家のサポートを受けるのも有効です。

薬剤師トレーナーの視点では、私たちが大切にしているのは「リバウンドしにくい設計=続けられる設計」です。無理のない範囲で習慣として定着させることが、結果的にいちばんの近道になると考えています。きつさで一時的に頑張るより、ゆるやかでも「やめない」ことを、60代の運動では何より優先してほしいと考えています。

筋トレ効果を高める食事|たんぱく質の摂り方

筋トレの効果を支えるのが食事、とりわけたんぱく質です。運動だけ・食事だけよりも、両方を組み合わせることが大切とされています。

なぜ高齢者にたんぱく質が重要か

たんぱく質は、筋肉をはじめ体をつくる材料です。摂取が不足すると、サルコペニアやフレイルの発症・進行の危険因子になるとされています(出典: 健康長寿ネット「高齢者の食事摂取基準」)。

実は、60代以降は「粗食・小食のほうが健康に良い」と考えて、知らないうちにたんぱく質が不足しがちです。しかし、筋肉を維持したい時期だからこそ、しっかり摂ることが重要になります。

1日にどれくらい摂ればいい?

目安は2つの方向から確認できます。

  • サルコペニア予防の観点では、たんぱく質を適正体重1kgあたり1日1.0g以上摂ることが、発症予防に有効な可能性があるとされています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」)。たとえば体重60kgの方なら、1日60g以上が一つの目安です。
  • 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、65歳以上はフレイル予防の観点が重視され、65〜74歳の推奨量の目安は男性60g/日・女性50g/日とされています(出典: 健康長寿ネット「高齢者の食事摂取基準」)。

なお、腎臓などに持病がある方は、たんぱく質の摂取量について医師の指示が優先されます。自己判断で増やしすぎず、かかりつけ医に確認してください。

何から摂る?(3食に分けて)

たんぱく質は、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などに多く含まれます。

食品の例 1食分の目安
肉・魚 手のひら1枚分
1個
納豆・豆腐 1パック / 1/3丁
牛乳・ヨーグルト コップ1杯 / 1カップ

ポイントは、1食にまとめず、朝・昼・夜の3食に分けて摂ることです。体は一度に大量のたんぱく質を使いきれないため、こまめに補うほうが効率的と考えられています。特に、朝食でたんぱく質が不足しやすいので意識してみてください。

やりがちなNG(極端な食事制限)

「体重を減らしたいから」と極端な食事制限をすると、脂肪だけでなく筋肉まで落としてしまい、かえってサルコペニアを招くおそれがあります。60代のダイエットは、「減らす」より「整える」が基本です。

薬剤師トレーナーの視点では、サルコペニアの予防には運動と栄養摂取の併用が、それぞれ単独で行うより効果的とされています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」)。筋トレで刺激を入れ、たんぱく質で材料を補う——この両輪がそろってはじめて、筋肉は応えてくれます。私たちが「一生使える食事管理」をお伝えしているのは、極端な制限ではなく、こうした体のしくみに沿った続けられる食べ方こそが本質だと考えているからです。

安全に行うための注意点と受診の目安

60代の筋トレで何より優先すべきは、安全です。ここは、多くの記事が手薄になりがちな大切なパートなので、丁寧にお伝えします。

運動を始める前に確認したいこと

次に当てはまる方は、運動を始める前にかかりつけ医へ相談することをおすすめします。

  • 高血圧・心疾患・糖尿病などの持病がある
  • 変形性関節症・腰や膝の痛みなど、整形外科的な不調がある
  • 骨粗鬆症と診断されている、または骨密度に不安がある
  • しばらく運動から離れていて、体力に自信がない

(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット/日本整形外科学会)

運動中に中止すべきサイン

運動中に次のような症状が出たら、すぐに中止してください。改善しない場合や繰り返す場合は、医療機関を受診しましょう。

  • 胸の痛み・圧迫感
  • 強い息切れ、息苦しさ
  • めまい・立ちくらみ・吐き気
  • 関節や腰の鋭い痛み

基本の安全ルール

  • 痛みを我慢しない:痛みは体の危険信号です。
  • 反動・はずみをつけない:ゆっくりした動作で、関節を守ります。
  • 呼吸を止めない:いきむと血圧が上がりやすくなります。
  • 準備運動・整理運動を:前後に軽いストレッチを取り入れましょう。正しいストレッチのやり方はストレッチの正しいやり方ガイドも参考になります。
  • 転倒に配慮:片脚立ちなどは必ず支えのそばで。

「自己流のフォームが不安」「持病があってどこまでやっていいか分からない」という場合は、無理に一人で進めず、専門家に見てもらう選択肢もあります。状態に合わせた強度設定とフォーム指導は、ケガの予防にもつながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 60代からでも、本当に筋肉は増えますか?
A. 個人差はありますが、高齢者でもレジスタンス運動によって筋量・筋力の向上が期待できるとされています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット)。「もう遅い」ということはありません。まずは無理のない範囲で始めてみてください。

Q. どれくらいで効果を感じられますか?
A. 効果の現れ方には大きな個人差があり、「何週間で必ず」とは言えません。一般に、筋力や体の動かしやすさの変化は数週間〜数か月かけて少しずつ現れることが多いとされています。焦らず、続けることを優先しましょう。

Q. 毎日やってもいいですか?
A. 同じ部位を毎日追い込むのはおすすめしません。筋トレは休養を含めて効果が高まるため、週2〜3回が目安です(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット)。ウォーキングなどの軽い運動は、体調に合わせて毎日行っても構いません。

Q. 筋トレの「やりすぎ」が心配です。血圧が高めでも大丈夫?
A. 60代の筋トレは、頑張りすぎないことがむしろ大切です。強度の目安は「ややきつい」程度で、歯を食いしばるような高負荷は必要ありません。力むと一時的に血圧が上がりやすいため、呼吸を止めないこと、回数を欲張らないことを意識してください。翌日まで残る強い疲労感や関節の痛みは「やりすぎ」のサインです。高血圧・心疾患などの持病がある方は、開始前にかかりつけ医へご相談のうえ、無理のない範囲で始めましょう。

Q. 膝や腰が痛いときはどうすれば?
A. 痛みがあるときは無理をせず中止してください。痛みが続く・繰り返す場合は、自己判断せず整形外科などの医療機関にご相談を。痛む部位を避けて行える種目もありますので、専門家に相談しながら進めると安心です。

Q. ジムと自宅、どちらがいいですか?
A. どちらにも良さがあります。自宅は手軽で続けやすく、ジムはフォーム指導・安全管理・適切な負荷設定を受けられるのが利点です。「一人だと不安」「持病が心配」「続かない」という方には、専門家の伴走がある環境が向いています。

Q. プロテイン(たんぱく質の補助食品)は必要ですか?
A. 必須ではありません。基本は3食の食事からたんぱく質を摂るのが理想です。食が細くて食事だけでは不足しがちな場合に、補助的に活用する選択肢、という位置づけです。持病のある方は医師にご相談ください。

まとめ|健康寿命を伸ばす「3本柱」を今日から

最後に、この記事のポイントを振り返ります。60代から健康寿命を伸ばすカギは、次の3本柱です。

  • 筋トレ(週2〜3回):椅子スクワットやかかと上げなど、自重で安全に。下半身を土台に。
  • バランス・有酸素運動:片脚立ち(支えあり)やウォーキングで、転倒予防と巡りをサポート。多要素な運動を週3日以上。
  • たんぱく質:体重1kgあたり1日1.0g以上を目安に、3食に分けて。極端な食事制限は禁物。

そして忘れてはいけないのが、フレイルには可逆性があるということ。「今からが分かれ道」です。一方で、効果には個人差があり、無理は禁物です。持病のある方や痛みのある方は、医師や専門家に相談しながら進めてください。

まずは、この記事のメニューから1〜2種類を選び、今日から始めてみましょう。小さな一歩の積み重ねが、数年後の「自分の足で歩ける毎日」につながっていきます。

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主な参考・出典


文責

白木 勝也
RBDジム オーナー・トレーナー
東大薬学部卒・薬剤師国家資格保有。熊本市南区を拠点に、理論に基づいた「リバウンドしにくい設計を目指したメソッド」で多くの女性のボディメイクをサポート。

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