blog ブログ

ストレス太りの原因と対策|コルチゾールを抑える7つの習慣

2026.08.24
ブログ

「イライラすると、甘いものやスナックが止まらない」
「食べる量は変わっていないのに、お腹まわりだけ出てきた」
「またやってしまった——意志が弱い自分が、本当に嫌になる」

もし一つでも当てはまるなら、まずお伝えしたいことがあります。それは、あなたの意志が弱いからではありません。

結論からお伝えします。ストレスで太るのは、ストレスに反応して分泌されるコルチゾールというホルモンの「リズム」が崩れ、血糖・食欲・睡眠・筋肉といった体の土台が同時に揺さぶられるからです。そして、ここが多くの記事で語られない大事な点なのですが、コルチゾールは「下げれば下げるほど良い」ホルモンではありません。 本来は朝に高く、夜に低い「山型」のリズムを描いて、私たちの生命を支えてくれています。問題なのは量そのものではなく、その山が崩れて、出っぱなしになってしまうことです。

だから対策も「我慢」ではなく、リズムを取り戻す7つの習慣になります。

この記事を読むと、次の3つがわかります。

  • なぜストレスで太るのか(HPA軸・コルチゾール・血糖・食欲ホルモン・睡眠の5つのメカニズム)
  • コルチゾールが出っぱなしになりにくい生活に整える7つの習慣(今日からできる具体行動つき)
  • やってはいけないことと、医療機関・公的相談窓口に相談する目安

執筆は、熊本市南区・南熊本のパーソナルジムRBDの薬剤師トレーナー(東大薬学部卒・薬剤師国家資格保有)が担当します。情報は厚生労働省などの公的資料と、確認できた原著論文に紐づけて解説します。

なお、本記事は治療ではなく、生活習慣(運動・食事・睡眠・休養)の情報提供です。体の変化や取り組みの結果には個人差があり、「必ず痩せる」「○kg減る」といった保証ではありません。また、当ジムは医療行為を行いません。強いストレス状態が続く、眠れない日が続く、気分の落ち込みが続く、体重が急に増減する——こうしたときは自己判断せず、医療機関や公的な相談窓口にご相談ください(詳しくは後半の「医療機関・相談窓口へ」の章でご案内します)。


目次

ストレス太りとは?まずは自分のタイプをチェック

コンビニでたんぱく質を意識した食品を選ぶ様子

「ストレス太り」という言葉はよく使われますが、医学的な診断名ではありません。この記事では、慢性的なストレスが続くなかで、食欲・血糖・睡眠・活動量が乱れ、結果として体重や体脂肪、とくにお腹まわりが増えていく状態を指すものとして扱います。

まず知っておきたいのは、ストレスに対する体の反応は「太る方向」だけではない、ということです。

ストレスで「太る人」と「痩せる人」がいるのはなぜ?

「私はストレスで食べてしまうけれど、同僚はストレスで食べられなくなるらしい」——これはよくある話です。同じストレスなのに、なぜ反応が正反対になるのでしょうか。

大きな鍵は、ストレスが「急性」か「慢性」かです。

厚生労働省 e-ヘルスネットは、ストレスを「外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応」と説明し、人間にとってはとくに心理的・社会的なストレスが大きいとしています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレス」)。このとき体の中では自律神経系と内分泌系が働き、心拍数や血圧、血糖値を上げる方向に切り替わって、「いま戦う・逃げる」ための臨戦態勢がつくられる——というのが、生理学で一般に説明されている流れです(詳しくは次章のHPA軸で解説します)。

  • 急性ストレス(短期):プレゼン直前、事故のあと、強い緊張。交感神経が一気に優位になり、消化管の働きは後回しになります。この局面では食欲は落ちやすい。「緊張して何も喉を通らない」状態です。
  • 慢性ストレス(長期):終わりの見えない仕事、育児・介護、人間関係。緊急スイッチが切れないまま、コルチゾールの分泌が続きやすい状態になります。コルチゾールは血糖を確保する方向に働き、後述するように高カロリーで嗜好性の高い食べ物への欲求を高める傾向が報告されています(出典: Adam TC & Epel ES, Physiology & Behavior 2007)。

つまり、ざっくり整理するとこうなります。

  主な神経・ホルモン 食欲 体重の傾向
急性ストレス 交感神経・アドレナリン優位 落ちやすい 一時的に減ることも
慢性ストレス コルチゾールの分泌が続きやすい 高まりやすい(とくに甘いもの・脂っこいもの) 増えやすい/お腹まわりに出やすい

もちろん、これは単純化した整理です。もともとの体質、生活環境、睡眠時間、その人にとってのストレスの種類によって反応は変わりますし、「急性で痩せて、長引くと太る」という両方を経験する方も珍しくありません。ただ、「私はストレスで食べてしまうタイプだ」と感じている方の多くは、慢性ストレスの局面にいると考えると、対策の方向が見えやすくなります。

ストレス太りに当てはまりやすい8つのサイン

以下は診断ではなく、生活を振り返るためのチェックリストです。当てはまる数が多いほど、この記事の内容が役立つ可能性があります。

  • [ ] 夕方から夜にかけて、甘いものやスナック菓子が止まらなくなる
  • [ ] 体重の増え方より、お腹まわりの変化のほうが気になる
  • [ ] 睡眠が6時間未満の日が多い、または夜中に目が覚める
  • [ ] 寝ても疲れが取れず、朝から体が重い
  • [ ] 「そんなに食べていないのに減らない」と感じる
  • [ ] ここ半年で、コーヒーやエナジードリンク、お酒の量が増えた
  • [ ] 休日は昼まで寝て「寝だめ」をしている
  • [ ] 食事を終えた直後なのに、また何か食べたくなる

いかがでしたか。多く当てはまったからといって、病気だという意味ではありません。 また、少数しか当てはまらなくても、体調に不安があるなら医療機関にご相談ください。ここで確認したかったのは、「自分を責める材料」ではなく、「どこから手をつけるか」です。

薬剤師トレーナーの視点では——このチェックで多く当てはまった方に、私たちがまずお伝えするのは「よく頑張ってこられましたね」という言葉です。夕方に甘いものが止まらないのは、意志が弱いからではありません。血糖・食欲ホルモン・睡眠という3つの土台が同時に揺さぶられているとき、人間の体は当たり前に「手っ取り早い燃料」を要求します。 責めるべきは自分ではなく、整えるべきは仕組みのほうです。


なぜストレスで太るのか?原因となる5つのメカニズム

ここからが、この記事の理論の核です。ストレスが体重・体脂肪に影響しうる道筋を、5つ(+補足1つ)に分けて説明します。専門用語が出てきますが、そのつど日常の言葉に翻訳しますので、身構えずに読み進めてください。

①ストレスがかかると体で何が起きるか——HPA軸とコルチゾール

ストレスを感じたとき、体の中では次のようなリレーが起こります。

  1. 視床下部(脳の司令塔)がストレスを察知して信号を出す
  2. 下垂体(中継役)がその信号を受けてホルモンを出す
  3. 副腎皮質(現場)が反応してコルチゾールを分泌する

この3段階の連絡網を、頭文字をとって HPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系)と呼びます。イメージとしては、社内の緊急連絡網です。トラブルが起きると、社長→部長→現場と伝言が回り、現場が「非常用の指示書」を出す。その指示書がコルチゾールです。

同時にアドレナリンなども分泌され、血糖値と血圧を上げ、呼吸を速め、脳を覚醒させる方向に体が切り替わります。コルチゾールを含むグルココルチコイドがストレス応答の中心にあり、血糖を確保する方向に働くことは、レビュー論文でも整理されています(出典: Adam TC & Epel ES. Physiology & Behavior 2007)。なお厚生労働省 e-ヘルスネットも、コントロールできないストレスが続くと、心身にさまざまな不適応反応が生じうると説明しています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレス」「休養・こころの健康」)。

ここで強調したいのは、これは異常でも故障でもなく、身を守るための正常な反応だということです。目の前に危険が迫ったとき、血糖を上げてすぐ動ける状態を作るのは、生き延びるために必要な仕組みでした。

問題は、現代のストレスが「数分で終わる危険」ではなく、「何ヶ月も続く状況」だということです。緊急用のスイッチが押されっぱなしになる。ここから、体重に関わる連鎖が始まります。

②コルチゾールは「悪者」ではない——大事なのは量より“リズム”

この記事で最もお伝えしたいのが、この項目です。

インターネットで「コルチゾール」と検索すると、「ストレスホルモン」「肥満ホルモン」といった言葉が並び、とにかく下げるべきものという印象を受けやすいと思います。しかし、これは正確ではありません。

コルチゾールは、血糖の維持、血圧の調整、炎症の制御、免疫のコントロールなど、生命維持に欠かせない働きを担っています。もし本当にゼロになったら、私たちは日常生活を送れません。

そしてコルチゾールには、はっきりとした日内変動があります。

  • 起床前後に最も高くなり、日中にかけてゆるやかに下がり、夜間に最も低くなる
  • 目覚めたあと、おおむね30〜60分ほどでピークを迎える一過性の上昇を、コルチゾール覚醒反応(CAR: Cortisol Awakening Response)と呼びます(出典: Bowles NP et al. Frontiers in Neuroscience 2022「The circadian system modulates the cortisol awakening response in humans」)

CARは、いわば朝、体が自分でエンジンをかける現象です。「さあ今日も動くぞ」と血糖と血圧を立ち上げてくれる。だから朝は上がるのが正常であり、むしろ朝しっかり上がった人ほど、夜にはきちんと下がるというメリハリが生まれます。

つまり、健康的な姿は「朝高く、夜低い山型」。ストレス太りの文脈で問題になるのは、この山の形が崩れることです。夜になっても下がりきらない、朝の立ち上がりが鈍い、一日中だらだらと出続けている——こうした状態が、血糖・食欲・睡眠に影響していきます。

だからこの記事のゴールは、「コルチゾールを減らす」ではなく「リズムを取り戻す」です。 以降の7つの習慣は、すべてこの一点に向かって設計されています。

薬剤師トレーナーの視点では——薬剤師として言えば、コルチゾールは副腎皮質ステロイド薬の“体内版”にあたる物質です。医療で使われるステロイド薬が、量とタイミングを厳密に管理して用いられるのは、それだけ強力に体を動かす作用を持つから。裏を返せば、体はもともと時間帯によって出す量を精密に調整する仕組みを持っている、ということです。目指すべきは「ゼロ」ではなく「リズム」。この一点を押さえるだけで、巷にあふれる「コルチゾールを下げる◯◯」という情報との距離の取り方が変わってくると思います。

③血糖とインスリンの乱れ、そして内臓脂肪

コルチゾールには、血糖値を上げる働きがあります。

その手段のひとつが糖新生です。日本栄養検定協会の解説では、コルチゾールは筋肉などのタンパク質を分解してブドウ糖を作り出し、血糖値を上げると説明されています。あわせて血糖が上がればインスリンの分泌が促され、食欲が高まり、使い切れなかった血糖は体脂肪として蓄えられていくという流れが紹介されています(出典: 一般社団法人 日本栄養検定協会「ストレスが多くなると太りやすい?コルチゾールの働きとは?」)。

翻訳すると、こういうことです。

  • 糖新生=体が「すぐ使える燃料」を確保しようとして、筋肉というタンパク質の貯金を切り崩して糖に変える
  • インスリン抵抗性=血糖を片づける係(インスリン)の声が届きにくくなる。片づけきれない糖が、脂肪として貯まりやすくなる

そして、脂肪のつき方にも特徴があります。

閉経前の女性を対象にした古典的な研究では、腹部(中心性)に脂肪が多い女性は、繰り返しの実験室ストレスに対してコルチゾールの分泌が一貫して大きかったと報告されています。興味深いのは、標準体重であっても腹部に脂肪が多い女性で同様の傾向が見られた点です(出典: Epel ES et al. Psychosomatic Medicine 62(5):623-632, 2000)。

また、慢性ストレス下ではグルココルチコイド(コルチゾールを含むホルモン群)とインスリン・レプチンのバランスが崩れ、摂取量の増加と内臓脂肪の蓄積に寄与しうるとするレビューもあります(出典: Adam TC & Epel ES. Physiology & Behavior 91:449-458, 2007)。

ここは表現を正確にしておきます。「内臓脂肪の細胞にはコルチゾールの受容体が特別に多いから腹部に溜まる」という説明を見かけることがありますが、一次情報が確認できませんでした。この記事では、内臓脂肪はホルモンの影響を受けやすい部位と考えられており、慢性的なストレスと腹部の脂肪蓄積との関連が報告されている、という範囲にとどめます。

なお、上記の研究は対象者が限定された条件下のものであり、「ストレスがあれば必ずお腹に脂肪がつく」という意味ではありません。

④食欲と“好み”が変わる——甘いもの・脂っこいものが欲しくなる仕組み

ストレス太りで多くの方を悩ませるのが、「量」だけでなく「何を食べたくなるか」が変わってしまうことです。

  • サラダではなく、チョコレートやポテトチップスに手が伸びる
  • 食後すぐなのに、甘いものが欲しくなる
  • 「もうやめよう」と思っているのに、袋が空になっている

これも、意志の問題として片づけられるものではありません。

グルココルチコイドは、高カロリーで嗜好性の高い食品(palatable food)への欲求を高める傾向があると報告されています。さらに、ストレスと嗜好性の高い食品はどちらも脳内で内因性オピオイドの放出に関わり、いわゆる「コンフォートフード(食べると気持ちが落ち着く食べ物)」がストレスを和らげる働きとして機能する神経基盤が共有されている、と説明されています(出典: Adam TC & Epel ES. Physiology & Behavior 2007)。

つまり、脳が「手っ取り早い燃料」を要求すると同時に、糖と脂質はストレスを和らげる回路にも働きかけている。二重の意味で、甘いもの・脂っこいものが選ばれやすくなっているのです。

さらに、こんな前向き研究もあります。朝のコルチゾール値や食欲に関わるホルモン(レプチン・グレリン・インスリン)が、6ヶ月後の食物渇望(food cravings)や体重の変化を予測しうると報告されました(出典: Chao AM et al. Obesity 25(4):713-720, 2017)。また、慢性的なストレスが高い女性ほど、コンフォートフードによる「慰め」の程度が大きかったという報告もあります(出典: Tomiyama AJ, Dallman MF, Epel ES. “Comfort food is comforting to those most stressed” Psychoneuroendocrinology 36(10):1513-1519, 2011)。

もう一点、よく話題になるのがセロトニンです。セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから作られ、精神の安定に関わるとされています。トリプトファンは炭水化物と一緒にとると脳へ取り込まれやすくなるとも説明されています(出典: 山梨県厚生連 健康管理センター)。

ただし、ここは慎重に書きます。「セロトニン不足が過食の原因」と断定できるほど話は単純ではありません。 甘いものが欲しくなる背景の一つとして、セロトニンや脳の報酬系の関与が指摘されている——この程度の理解が誠実だと考えます。実践に落とすなら、朝食でタンパク質と主食をそろえる/朝に光を浴びる/歩くようなリズミカルな運動を取り入れるという、生活習慣の話に着地させるのが現実的です。

薬剤師トレーナーの視点では——「夜に甘いものを食べてしまう自分が情けない」とおっしゃる方に、私はいつもこう説明します。それは意志の敗北ではなく、生き延びるための仕組みが正常に働いた結果です。 血糖が不安定で、睡眠が足りず、コルチゾールが下がりきっていない体に「我慢しろ」と命じるのは、燃料計が空を指している車に「ガソリンを入れずに走れ」と言うようなもの。順番が逆なのです。まず土台を整える。食欲との戦いは、その後で驚くほど楽になります。

⑤睡眠不足との悪循環——ここが最大の落とし穴

ストレスと睡眠の関係は、一方通行ではなく双方向です。ここを断ち切ることが、ストレス太り対策の最重要ポイントだと私たちは考えています。

まず、睡眠不足そのものがコルチゾールのリズムを乱します。 部分断眠・完全断眠の実験では、翌日の夕方のコルチゾールがそれぞれ約37%・約45%上昇し、コルチゾール分泌が静まっていく時間帯の開始が1時間以上遅れたと報告されています(出典: Leproult R, Copinschi G, Buxton O, Van Cauter E. SLEEP 20(10):865-870, 1997)。

言い換えれば、睡眠負債は「夜になってもコルチゾールが下がりきらない」状態を作りうるということです。第②項でお話しした「山型のリズム」が、まさに崩れる方向に働きます。

さらに、睡眠不足は食欲ホルモンも揺さぶります。健康な若年男性12名を対象に、4時間睡眠を2晩続けた実験では、空腹を促すグレリンが約28%上昇し、満腹を伝えるレプチンが約18%低下。空腹感と食欲が増加し、とくにキャンディ・クッキー・ケーキなどの甘いものや、でんぷん質の食べ物への欲求が強まりました(果物・野菜・乳製品への欲求の増加は小さいものでした)(出典: Spiegel K et al. Annals of Internal Medicine 141(11):846-850, 2004)。

レプチンは満腹のブレーキ、グレリンは空腹のアクセル。 睡眠が足りないと、ブレーキが効きにくくなり、アクセルが踏まれやすくなる——そうイメージすると分かりやすいと思います。

なお、この数値は12名の若年男性を対象とした厳しい条件(4時間睡眠×2晩)での結果です。「あなたも必ず28%増える」という意味ではありませんので、そこは正確に受け取ってください。

これを一続きにすると、次のループが見えてきます。

ストレス → 眠りが浅い・短い → 夜もコルチゾールが下がりきらない → 食欲と好みが乱れる → 夜に食べすぎる → 自責と翌朝のだるさ → さらにストレス

厚生労働省 e-ヘルスネットでも、睡眠不足や不規則な睡眠リズム、睡眠障害は生活習慣病のリスクを高め、症状を悪化させうるとされています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と健康」「快眠と生活習慣」)。

このループは、どこか1ヶ所を断てば全体が緩みます。そして、最も断ちやすいのが睡眠です。睡眠と体重の関係をさらに詳しく知りたい方は、なぜ睡眠不足だと太るのか(睡眠と痩せる関係を研究データで解説)もあわせてご覧ください。

⑥【補足】筋肉が減り、代謝の土台が下がる

最後に、見落とされがちな補足を一つ。

第③項で触れたとおり、コルチゾールは糖新生の過程で筋肉のタンパク質を分解する方向にも働くとされています。加えて、ストレスが続くと「動く気力」そのものが落ち、活動量が減りやすくなります。

厚生労働省 e-ヘルスネットは、加齢にともなう基礎代謝の低下の主な要因は、骨格筋量(筋肉の量)の減少にあると説明しています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」)。

つまり、慢性ストレスの状態が長引くと、

  • 筋肉というエネルギーを多く使う組織が守られにくくなる
  • 活動量が落ちて、さらに筋肉が使われなくなる
  • 結果として、同じ食事でも太りやすい土台に傾いていく

という流れが起こりえます。「ストレスで筋肉が溶ける」といった煽り方をするつもりはありません。ただ、ストレス対策と筋肉を守ることはセットで考えるべき、というのが私たちの立場です。代謝の土台づくりについては基礎代謝を上げる10の習慣で詳しく解説しています。

ここまでを一枚に整理すると、こうなります。

メカニズム 体で起きていること 体重・体型への影響
①HPA軸の作動 緊急用スイッチが入り、血糖・血圧が上がる 短期では問題なし。続くと下記へ
②リズムの崩れ 夜もコルチゾールが下がりきらない 睡眠・食欲の乱れの起点になる
③血糖とインスリン 糖新生・インスリン抵抗性 内臓脂肪が蓄積しやすい方向へ
④食欲と好みの変化 高糖質・高脂質への欲求が高まる 摂取エネルギーが増えやすい
⑤睡眠不足の悪循環 グレリン↑/レプチン↓ 夜の過食・自責のループ
⑥筋肉と活動量の低下 骨格筋量の減少 基礎代謝の土台が下がる

コルチゾールを抑える7つの習慣

朝すっきり目覚める日本人女性

ここからが実践編です。その前に、この章のタイトルにある「抑える」の意味を、はっきり定義させてください。

ここでいう「抑える」とは、薬のようにホルモンの分泌を止めるという意味ではありません。ストレスがかかり続けてコルチゾールが出っぱなしになりやすい生活を、本来の「朝高く・夜低い」リズムに近づけていく、という意味です。

繰り返しますが、コルチゾールは生命維持に必要なホルモンです。ゼロにする対象ではありませんし、生活習慣で「正常化する」と保証できるものでもありません。ここで紹介するのは、リズムを整えるうえで役立つとされている生活習慣です。効果の感じ方には個人差があります。

7つすべてを一度に始める必要はありません。まずは1つだけ。おすすめは、習慣①(睡眠)か習慣⑦(呼吸法)です。

各習慣は「なぜ役立つとされるのか/今日からの具体行動/よくあるNG」の3点セットで整理しました。

習慣①|睡眠を6〜8時間、そして起床時刻をそろえる

なぜ役立つとされるのか

第⑤項で見たとおり、睡眠不足は夕方のコルチゾール上昇と関連し(Leproult 1997)、食欲ホルモンのバランスにも影響します(Spiegel 2004)。睡眠は、崩れたリズムを立て直すための最短ルートです。

厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人について「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」という趣旨の推奨が示されています(多くの人では6〜8時間程度の幅に収まるとされます)。逆に言えば、「◯時間寝れば大丈夫」という一律の数字はありません。

そして、時間と同じくらい大切なのが起床時刻の一定さです。体内時計は「寝た時刻」より「起きて光を浴びた時刻」でリセットされやすいため、就寝時刻がバラついても、起床時刻だけはそろえるほうが現実的で効果的です。

今日からの具体行動

  • 起床時刻を決めて、平日も休日も±1時間以内に収める(まずはこれだけでも十分)
  • 就寝1時間前から照明を落とし、スマホの画面から目を離す時間をつくる
  • 「あと30分だけ動画を見る」を「あと30分早くベッドに入る」に置き換える週を1週間だけ試す

よくあるNG

  • 休日の寝だめ幅が2時間以上。平日6時起き・休日11時起きは、時差のある地域へ毎週旅行しているのと近い状態です。眠いなら、起床時刻はそろえたうえで日中に20分ほどの短い昼寝を。
  • 「眠れないから」と早くベッドに入り、布団の中で悶々とする。かえって眠りと寝床の結びつきが弱くなることがあります。

睡眠を整える具体的な工夫は、睡眠の質を上げる10の習慣で10項目にまとめています。

習慣②|朝、光を浴びる——「上げるべきときに上げる」

なぜ役立つとされるのか

ここは、多くの方が誤解しやすいポイントです。

研究では、起床後に明るい光を浴びると、コルチゾール覚醒反応(CAR)が高まることが報告されています。暗い光より明るい光で、また赤色光より青色・緑色の光でCARが増大したという結果もあります(出典: Petrowski K et al. Psychoneuroendocrinology 2019/JCEM 2001「Transition from Dim to Bright Light in the Morning Induces an Immediate Elevation of Cortisol Levels」)。

「え、朝の光でコルチゾールが上がるの? それは悪いことでは?」——そう思われたなら、それこそが第②項でお伝えした誤解です。

朝は、上がるのが正常です。 むしろ朝しっかり立ち上げることが、夜にきちんと下がるメリハリをつくります。山型のリズムは、朝の山を削ることではなく、朝の山をきちんと立てて、夜に静かに下ろすことで完成します。

今日からの具体行動

  • 起床後、まずカーテンを開ける(1秒でできる最強の習慣です)
  • 起床後30分以内に、15分程度を目安に屋外またはベランダで光を浴びる
  • 朝の身支度を、窓際でおこなう
  • 少し早めに家を出て、一駅ぶん・バス停ひとつぶん歩く。光と軽い運動を同時に確保できます

よくあるNG

  • 朝は室内で照明のみ、通勤は地下や車内、日中も窓のないオフィス——という一日。光を浴びる機会がゼロになりがちです。昼休みに5分だけ外に出るなど、どこかで「明るい時間帯」を体に伝える工夫を。
  • 逆に、夜に強い光を浴びすぎること。夜はリズムを下ろす時間帯です。深夜のコンビニの照明やスマホの明るさは、控えめにしましょう。

習慣③|運動は「中強度・継続」を軸に。追い込みすぎない

なぜ役立つとされるのか

パーソナルジムとしては少し言いにくい話から始めます。

心理的な苦痛を抱える集団を対象とした44の無作為化比較試験(計3,284名)のシステマティックレビュー+ネットワークメタ解析(Sports 13(12):415, 2025)では、次のような結果が報告されています。

  • 運動全体として、コルチゾールの中程度の低下と関連していた
  • 効果量が最も大きかったのはヨガ、次いで気功、そして複合運動(マルチコンポーネント)
  • HIIT(高強度インターバルトレーニング)は、むしろコルチゾールを上げる傾向が見られた(統計的に有意ではない)
  • 用量反応は逆U字——多すぎても少なすぎても効果が下がり、最適はおよそ530 MET-min/週。介入期間が長いほど低下幅が大きい

「530 MET-min/週」はイメージしにくいので補足します。METは活動の強度を表す単位で、ふつうの歩行〜早歩きはおよそ3.5〜4.5メッツにあたるとされます。ここから単純計算すると、早歩き換算でおよそ週120〜150分程度(1日あたり20分前後)——これがざっくりした目安です。ただしこれはあくまで概算であり、歩く速さや体格によって前後します。「この分数を守れば効果が出る」という基準ではありませんが、少なくとも非現実的な量ではない、ということはお伝えできます。

一方で、筋トレを否定するつもりはまったくありません。 第⑥項で触れたとおり、筋肉は基礎代謝の土台です。厚生労働省 e-ヘルスネットでも、身体活動・運動はメンタルヘルスやQOLの改善に有用とされ、生活習慣病の予防にも意義が認められていると説明されています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動・運動」)。

整理すると、役割分担です。

種類 主な役割 目安
ウォーキング等の有酸素 内臓脂肪へのアプローチ/リズムをつくる 早歩きで週120〜150分程度(1日20分前後・概算の目安)
筋トレ(自重〜中強度) 筋肉=代謝の土台を守る 週2〜3回、「ややきつい」手前
ヨガ・ストレッチ・呼吸を伴う運動 緊張をゆるめ、リラックスを促す 週2〜3回、10〜20分から

今日からの具体行動

  • 通勤・買い物の歩きを「少し早歩き」に。厚生労働省の身体活動・運動ガイドでも「今より10分多く動く(プラス・テン)」という考え方が示されています
  • 自重の筋トレ(スクワット・ヒップリフトなど)を週2〜3回、1種目10回×2〜3セットから
  • 就寝前に、ヨガ的なストレッチを5〜10分

歩き方のコツはウォーキングで痩せる7つのコツ、自宅でできるヨガはヨガ初心者の自宅メソッド|柔軟性を目指す基本の5ポーズにまとめています。

よくあるNG

  • ストレスが溜まっているときほど、限界まで追い込むトレーニングで発散しようとすること。上記のメタ解析からは、少なくとも「追い込むほど良い」とは言えません。
  • 睡眠を削って早朝トレーニングを増やす(習慣①と矛盾します。詳しくは「やってはいけないこと」の章で)

熊本でも、通勤・子育て・介護が重なる世代の方から「運動する時間がまとまって取れない」という声を本当によくいただきます。まとまった時間がないなら、分割して構いません。 10分×2回でも、生活のなかの早歩きでも、体にとっては活動量です。

薬剤師トレーナーの視点では——パーソナルジムとしては言いにくいことですが、ストレス対策としての運動は「追い込むほど良い」わけではありません(Sports 2025のネットワークメタ解析より)。強度の高い運動は、それ自体が体にとって一種のストレスでもあります。もちろん筋トレには筋肉を守るという別の重要な役割があるので、否定はしません。要は目的に合わせて強度を選ぶこと。ストレスで消耗している時期は、「ややきつい」の手前で、長く続けられる形に落とし込むほうが理にかなっています。

習慣④|血糖の波を小さくする食べ方

なぜ役立つとされるのか

第③項のとおり、コルチゾールは血糖を上げる方向に働き、そこにインスリンが応答します。ここに食事による大きな血糖の波が重なると、食欲の乱れが増幅されやすくなります。

「朝食を抜いて、昼にどか食いして、夕方に甘いもの」というパターンは、まさに波を大きくする食べ方です。狙いはシンプルで、波をなだらかにすること

今日からの具体行動

  • 朝食を抜かない。 とくにタンパク質(卵・納豆・ヨーグルト・味噌汁の具など)を一品。朝にタンパク質と主食をそろえることは、第④項で触れたトリプトファンの話ともつながります
  • 食べる順番:野菜・海藻・きのこなどの食物繊維、次にタンパク質、最後に主食
  • 間食は「決めて食べる」。 我慢ではなく設計です。「15時にナッツかヨーグルト」とあらかじめ決めておくと、夕方の暴走が起きにくくなります
  • 主食は抜くのではなく、量を決めて必ず入れる

よくあるNG

  • 極端な糖質制限・カロリー制限。 これは次章で詳しく扱いますが、体にとっては強いストレッサーになりえます
  • 「夜だけ抜く」を続けて、翌朝の反動で食べすぎる
  • サプリメントで対処しようとすること。ビタミンC・B群・オメガ3などは大切な栄養素ですが、「ストレスに効く」「コルチゾールを下げる」といった働きを、私たちが謳うことはできません。 まずは食事から。持病がある方や服薬中の方は、サプリメントの利用について医師・薬剤師にご相談ください

習慣⑤|カフェインは「量」と「時間」を決める

なぜ役立つとされるのか

コーヒーが好きな方には、あらかじめお伝えしておきます。「やめてください」という話ではありません。

研究では、カフェインはアデノシン受容体への拮抗作用を介して視床下部の室傍核に作用し、HPA系を刺激しうると報告されています(出典: Patz MD et al. “Modulation of the hypothalamo–pituitary–adrenocortical axis by caffeine” Psychoneuroendocrinology 31(4):493-500, 2006。※このメカニズムの検討は主に動物実験によるものです)。ヒトを対象とした試験でも、カフェインを反復摂取した日は、精神的ストレス時・運動時・食後を通じてコルチゾールが高くなったと報告されています(出典: Lovallo WR et al. Pharmacology Biochemistry and Behavior 83(3):441-447, 2006)。

つまりカフェインは、HPA軸というリレーに、外から一押しを加える性質を持っているということです。一方で、習慣的に摂取している人では反応の大きさが変わる(部分的に耐性がつく)ことも指摘されており、個人差が大きい分野でもあります。

問題になりやすいのは、すでにストレス過多で、コルチゾールが下がりにくくなっている時期に、さらにカフェインを増やすこと。そして午後遅くの摂取が夜の眠りに影響し、習慣①を崩すことです。

今日からの具体行動

  • 本数と時間を先に決める。 例:「1日3杯まで、15時以降は飲まない」
  • 眠りが浅いと感じる時期は、最後の1杯を昼までに前倒ししてみる
  • 午後の眠気対策は、コーヒーの追加より5分の散歩・階段の上り下り・窓際で光を浴びるに置き換える
  • エナジードリンクは「頑張るためのブースト」ではなく「借金」だと捉える

よくあるNG

  • 「疲れているからもう1杯」を繰り返し、寝つきが悪くなり、翌日さらに疲れるというループ
  • 空腹時に濃いコーヒーだけで済ませる朝食代わりの1杯

薬剤師トレーナーの視点では——薬剤師の仕事は、成分の善悪を決めることではなく、量とタイミングを設計することです。カフェインもまったく同じで、「悪者かどうか」ではなく「いつ、どれだけ」が本質です。朝の1杯は、リズムを立ち上げる朝の時間帯とむしろ相性がいい。一方で、夕方以降の1杯は夜のリズムを妨げる方向に働きえます。同じ1杯でも、置く場所で意味が変わる——ここを設計できるかどうかです。

習慣⑥|「寝酒」に頼らない

なぜ役立つとされるのか

「お酒を飲まないと眠れない」という方は少なくありません。しかし、ストレス太り対策という観点では、寝酒は優先度の高い見直しポイントです。

米国国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)の総説では、アルコールはHPA軸の調節バランスを乱し、慢性的な飲酒時にも、また離脱時にも、コルチゾール分泌の過剰が起こりうるとされています(出典: NIAAA Alcohol Research: Current Reviews)。

さらに、厚生労働省 e-ヘルスネットでも、アルコールは寝つきをよくするように感じても、睡眠の質を下げうることが解説されています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」)。眠りが浅くなれば、習慣①が崩れ、第⑤項の悪循環に戻ってしまいます。

今日からの具体行動

  • 就寝の3時間前までに飲み終える(量より、まず時間から)
  • 週に2日の休肝日を、先にカレンダーに入れてしまう
  • 「眠るための一杯」を、入浴・ストレッチ・ノンカフェインの温かい飲み物に置き換えてみる
  • 飲む日は、水を交互に挟む

よくあるNG

  • 「寝酒は睡眠導入に良い」と思い込んで習慣化すること
  • ストレスが強い週ほど飲酒量が増える、というパターンを放置すること

飲酒については、量や体質による個人差が大きく、健康影響の判断は医療の領域です。気になる症状がある場合や、飲酒量をご自身でコントロールしにくいと感じる場合は、医療機関にご相談ください。

習慣⑦|1日5分の呼吸法とリラックスタイム

なぜ役立つとされるのか

「ストレスをなくしましょう」と言われても、仕事も育児も介護も、なくすことはできません。だからこそ現実的なのは、受け止めたあとに、自分で緊張をゆるめる手段を持っておくことです。

厚生労働省「こころの耳」では、リラクセーション(心身の緊張をゆるめること)の代表的な方法として、呼吸法漸進的筋弛緩法が紹介されています。不安・緊張・怒りなどの負荷がかかると呼吸は浅く速くなるとされ、4〜5分を目安に、同じリズムで腹式呼吸を繰り返す方法が案内されています(出典: 厚生労働省「こころの耳」ストレス軽減ノウハウ/「15分でわかるセルフケア」)。

研究面でも、無作為化比較試験のメタ解析で、呼吸法(breathwork)はストレス・不安・抑うつの心理尺度において対照群より有意に低い値と関連したと報告されています(出典: Fincham GW et al. Scientific Reports 13:432, 2023)。また、2型糖尿病の女性を対象としたRCTでは、有酸素運動にゆっくりした深呼吸とマインドフルネス瞑想を6週間組み合わせた群のほうが、有酸素運動のみの群よりコルチゾールが有意に低かったと報告されています(出典: Obaya HE et al. Frontiers in Physiology 2023)。過体重・肥満の女性を対象に、マインドフルネス介入とコルチゾール・腹部脂肪の関係を検討した探索的RCTもあります(出典: Daubenmier J et al. Journal of Obesity 2011)。

いずれも「呼吸法をすればコルチゾールが下がります」と断定できる根拠ではありません。リラックスに役立つ方法として公的機関が紹介しており、研究でも一定の報告がある——この受け止め方が正確です。

今日からの具体行動(腹式呼吸・4〜5分)

  1. 椅子に浅く腰かけるか、仰向けに寝ます。片手をお腹に添えます
  2. 口からゆっくり息を吐き切ります(吐くほうが先です)
  3. 鼻からゆっくり息を吸い、お腹がふくらむのを手で感じます(4秒目安)
  4. 1〜2秒止めて、口から細く長く吐きます(6〜8秒目安)
  5. これを同じリズムで4〜5分繰り返します。数を数えると集中しやすくなります

慣れてきたら、漸進的筋弛緩法も試してみてください。手・肩・顔・脚などの筋肉を5秒ほどぎゅっと力を入れ、15〜20秒かけて一気にゆるめるという方法で、「力を抜く感覚」をつかむ練習になります。

そのほか、リラックスの引き出しとして次のようなものがあります。

  • 湯船につかる(シャワーだけで済ませない日を週に数日)
  • 就寝前のゆっくりしたストレッチ・ヨガ
  • 好きな音楽・香り・読書など、画面を見ない時間

よくあるNG

  • 「うまくできているか」を採点してしまうこと。うまくやる必要はありません。呼吸に注意が向いた時間があれば、それで十分です
  • 完璧に静かな環境を準備しようとして、結局やらないまま終わること。信号待ちの30秒でも構いません

+α|一人で抱えない——「つながり」というストレス対策

7つの習慣に加えて、もう一つだけ。これは軽視されがちですが、研究の裏づけがあります。

心理社会的ストレス課題を用いた研究では、社会的サポートが唾液・血中のコルチゾール反応を抑制する方向に働き、落ち着きが増して不安が減少したと報告されています(出典: Heinrichs M et al. Biological Psychiatry 54(12):1389-1398, 2003)。

※この研究にはオキシトシンの投与条件が含まれますが、それは研究上の投与であり、一般に推奨される健康法ではありません。ここでお伝えしたいのは、人に話を聞いてもらうこと、誰かと一緒に取り組むこと自体が、ストレス反応を和らげる方向に働くと報告されているという点です。

今日からの具体行動

  • 悩みを「解決してもらう」ためではなく、話すために誰かに話す
  • 家族・友人と、一緒に歩く時間をつくる
  • ジムやサークルなど、一人で頑張らなくていい場所を確保する

ダイエットが続かない理由の多くは、知識不足ではなく「一人で抱えていること」だと、私たちは現場で感じています。一人で頑張らないことには、生理学的な意味があるのです。


ストレス太り対策で「やってはいけない」こと

トレーナー指導のもと運動する50代男性

良かれと思ってやっていることが、かえってコルチゾールのリズムを乱している——このパターンは本当によく見かけます。

①ダイエットそのものを、新しいストレスにしない

これが最も重要です。

極端なカロリー制限・糖質制限、毎日の体重計への一喜一憂、「今日も完璧にできなかった」という自責——これらはすべて、体にとっての負荷になりえます。第③項で見たように、体はエネルギーが不足すると血糖を確保しようとします。そこに睡眠不足や強い制限が重なると、食欲の乱れ→過食→自責→さらに厳しい制限という、極めて起こりやすいループに入っていきます。

これが、リバウンドの生理学的な正体の一つだと私たちは考えています。

代わりにできること

  • 体重は毎日ではなく週単位の平均で見る(1日の変動の大半は水分です)
  • 「守れたら○」ではなく「7割できたら合格」というルールに変える
  • 食事は「引き算」より「足し算」から。タンパク質と野菜を先に足すと、自然に整いやすくなります

②「ストレス発散=食べる」以外の引き出しを増やす

食べることは、確かに手軽で即効性のある対処法です。だからこそ、それしかないと苦しくなります。引き出しは多いほど楽になります。

  • 5分歩く/階段を上り下りする
  • 熱めのシャワーではなく、湯船につかる
  • 誰かに10分だけ話を聞いてもらう
  • 紙に「いま嫌なこと」を書き出して、そのまま閉じる
  • 音楽をかけて、家事を1つだけ片づける
  • 4〜5分の腹式呼吸(習慣⑦)
  • ストレッチ・ヨガを10分

すべて試す必要はありません。 自分に合う2〜3個が見つかれば十分です。

③サプリや健康食品で「コルチゾールを下げよう」としない

薬剤師の立場から、はっきりお伝えします。

「これを飲めばコルチゾールが下がる」といった効能を、私たちが謳うことはできません。 特定の成分について、そうした効果を断定的に説明することは適切ではありませんし、睡眠・食事・運動という土台を整えないまま、サプリメントだけで状況が変わることを期待するのは現実的ではない、というのが私たちの考えです。

栄養素はあくまで食事から。そして、持病のある方、服薬中の方は、サプリメントの利用について必ず医師・薬剤師にご相談ください。 飲み合わせによっては注意が必要なものもあります。

なお、インターネット上には「副腎が疲れている」といった説明も見られますが、これは医学的に確立された概念・診断名ではありません。 そのため、この記事ではその枠組みを用いた説明はしません。気になる症状があるときは、憶測で自己判断せず、医療機関で相談していただくのが確実です。

④睡眠時間を削って運動しない

「痩せたいから、睡眠を削って朝5時に走る」——気持ちは分かりますが、本末転倒になりやすい選択です。

Leproult 1997の報告のとおり、睡眠不足は夕方のコルチゾール上昇と関連します。せっかくの運動が、乱れたリズムの上に積み上げられてしまうのはもったいない。削るなら運動時間ではなく、夜のスマホ時間です。

⑤「ストレスをなくす」ことをゴールにしない

仕事、子育て、介護、人間関係。ストレス源そのものを消すことは、多くの場合できません。 そして、消せないことに悩むこと自体が、新しいストレスになります。

この記事が提案しているのは、「ストレスをなくす」ではなく、「ストレスを受けても、リズムが崩れにくい生活を設計する」というアプローチです。

薬剤師トレーナーの視点では——私たちが「リバウンドしにくい設計を目指したメソッド」と表現しているのは、絶対にリバウンドしないと保証するものではありません。体にストレスをかけすぎない設計にする、という考え方を指しています。極端な制限で短期間に落とした体重は、ホルモンと食欲の反動を伴いやすい。だから私たちは、一生使える食事管理——つまり、忙しい週も、疲れた日も、旅行中も破綻しない食べ方を一緒に作ることを大切にしています。遠回りに見えて、これが一番の近道だと考えています。


【薬剤師トレーナー解説】コルチゾールとの正しい付き合い方

コルチゾールは「体内版のステロイド」——だからこそリズムが命

もう一度、記事の核心に戻ります。

先ほど、コルチゾールは副腎皮質ステロイド薬の“体内版”にあたる、とお伝えしました。ここで一つ、薬剤師ならではの補足を。医療で用いられる副腎皮質ステロイド薬は、「朝に飲む」という指示が付くことが少なくありません。 体がもともと持っている「朝に高く、夜に低い」リズムに、できるだけ沿わせるためです(※実際の服用方法は必ず処方の指示に従ってください)。

つまり薬の世界では、「どれだけ出すか」と同じくらい「いつ出すか」が重視されている、ということです。そして体は、それを毎日、自動でやっています。必要な時間帯に必要なだけ出し、不要な時間帯には静かに引く。この精密な調整こそが、健康な状態です。

だから「一日中、とにかくコルチゾールを低くする」という発想は、実は少し的を外しています。大切なのは高さの平均値ではなく、朝と夜の落差(メリハリ)です。 朝の立ち上がりを削ることは、そのメリハリを取り戻すことにはつながりません。

私たちが目指すのは、山の形を取り戻すこと。7つの習慣は、そのためのアプローチです。

  • 習慣①②(睡眠・朝の光)= 朝の山を立てる
  • 習慣⑤⑥(カフェイン・アルコール)= 夜の谷を邪魔しない
  • 習慣③④⑦(運動・食事・呼吸)= 一日を通して波を穏やかにする

こう見ると、7つがバラバラの対策ではなく、一つの目的に向かった設計であることが分かっていただけると思います。

「ストレスをなくす」のではなく、「受け止める土台」をつくる

現代の生活で、ストレスをゼロにすることは現実的ではありません。であれば、考えるべきは同じ負荷を受けても、崩れにくい土台をどう作るかです。

その土台は、結局のところ4本の柱に集約されます。

  1. 睡眠 — 回復の時間を確保する
  2. 運動 — 筋肉という代謝の土台を守り、緊張をゆるめる
  3. 栄養 — 血糖の波を穏やかにし、材料を切らさない
  4. つながり — 一人で抱えない

派手さはありません。けれど、公的資料と研究が一貫して支持しているのは、この4つです。「ストレスに強い体質」は生まれつきだけで決まるものではなく、日々の設計でつくれる部分がある——これが、私たちが現場で最も伝えたいことです。

薬剤師トレーナーの視点では——ホルモンの話をすると「じゃあ検査すればいいですか」と聞かれることがあります。ですが、コルチゾールの測定や評価は医療の領域であり、私たちが検査を勧めたり、数値を解釈したりすることはできません。 できるのは、生活習慣という土台の部分で、安全に、誠実に伴走することです。この線引きを守ることが、結果的にあなたの体を守ることにつながると考えています。


こんなときは、医療機関・相談窓口へ

ここは、この記事で最も丁寧に書きたい部分です。

当ジムを含むパーソナルジムは、医療行為を行いません。 生活習慣の面でお手伝いすることはできますが、診断・治療はできませんし、してはいけません。

次のような状態があるときは、生活習慣の工夫だけで抱え込まず、医療機関にご相談ください。

  • 強いストレス状態が2週間以上続いている
  • 眠れない日が続く、または朝早く目が覚めてしまう日が続く
  • 気分の落ち込みや意欲の低下が続き、日常生活に支障がある
  • 体重が急激に増えた/減った
  • 顔や体のむくみ、お腹まわりだけが極端に増えるなど、気になる体の変化がある
  • 動悸、強い倦怠感など、体の不調が続いている

体重の急な変化やむくみは、生活習慣以外の要因が関わっていることもあります。自己判断せず、まずは医療機関で体の状態を確認していただくのが安心です。

主な相談先

  • かかりつけ医・内科:まずはここで問題ありません。必要に応じて適切な科を案内してもらえます
  • 心療内科・精神科:心身の不調について専門的に相談できます
  • 厚生労働省「こころの耳」:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト。電話・SNS・メールでの相談窓口が案内されています(https://kokoro.mhlw.go.jp/)
  • お住まいの自治体の保健センター・精神保健福祉センター

「病院に行くほどではないかもしれない」と迷う段階でも、相談して構いません。早めに相談することは、弱さではなく合理的な判断です。

そして、医療機関にかかったうえで、生活習慣の面を並行して整えていくのが、最も安心な進め方です。医療と生活習慣には、それぞれ別の役割があります。


よくある質問(FAQ)

Q. ストレス太りは、普通のダイエットで落とせますか?

A. カロリーと運動という基本は共通ですが、睡眠とストレスの土台を整えないまま食事制限だけを強めると、うまくいきにくい傾向があります。第③〜⑤項で見たとおり、食欲そのものが乱れている状態で「我慢」を積み増すと、反動が出やすいためです。順番としては、まず睡眠と血糖の波、そのうえで食事量の調整をおすすめします。結果には個人差があります。

Q. コルチゾールは、低ければ低いほど良いのですか?

A. いいえ。 コルチゾールは血糖・血圧・免疫の調整など、生命維持に欠かせない働きを担っています。健康な状態は「朝に高く、夜に低い」山型のリズムです。目指すのは「ゼロにすること」ではなく「リズムを取り戻すこと」。この記事の7つの習慣は、すべてそのために設計されています。

Q. ストレスで痩せる人がいるのはなぜですか?

A. ストレスが急性(短期)の局面では、交感神経が優位になって消化管の働きが後回しになり、食欲が落ちやすくなります。一方、慢性(長期)になるとコルチゾールの分泌が続きやすく、高カロリーで嗜好性の高い食べ物への欲求が高まる傾向が報告されています。同じ人でも、局面によって反応が変わることがあります。

Q. 甘いものを我慢できません。どうすればいいですか?

A. 我慢の前に、「なぜ欲しくなっているか」を分解してみてください。①睡眠が足りているか、②朝食を抜いていないか、③昼から夕方まで何も食べずに空腹を引き延ばしていないか。この3つを整えるだけで、夕方の欲求が落ち着く方は少なくありません。そのうえで、間食は禁止ではなく「決めて食べる」。禁止は反動を生みます。

Q. コーヒーはやめたほうがいいですか?

A. やめる必要はありません。ポイントは量とタイミングです。カフェインはHPA軸を刺激する性質が報告されていますが、反応には個人差があり、普段から飲んでいる人では小さくなることも知られています。「1日◯杯まで、15時以降は飲まない」といった形で、先に設計しておくことをおすすめします。

Q. どんな運動が向いていますか?

A. 役割分担で考えてください。ヨガ・ストレッチは緊張をゆるめる役、ウォーキングなどの有酸素は内臓脂肪へのアプローチと生活リズムづくりの役、筋トレは代謝の土台である筋肉を守る役です。ストレスで消耗している時期は、追い込む強度より「ややきつい」の手前で継続するほうが、報告されている知見とも整合的です。

Q. サプリでコルチゾールは下げられますか?

A. 特定のサプリメントについて、そうした効能をお伝えすることはできません。 栄養素は基本的に食事から摂ることをおすすめします。持病がある方、服薬中の方は、サプリメントの利用について医師・薬剤師にご相談ください。

Q. どのくらいで変化を感じますか?

A. 個人差が大きく、期間をお約束することはできません。 ただ、現場での実感としては、睡眠と朝の光を整えた方が比較的早く「夕方の食欲が落ち着いた」「朝が少し楽になった」と話されることが多い印象です(これは個人の感想であり、効果を保証するものではありません)。体重の変化は、それより後からついてくると考えてください。


まとめ|ストレス太りは「意志」ではなく「仕組み」で解決する

長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。最後に要点を振り返ります。

なぜストレスで太るのか(メカニズム)

  • ①ストレスでHPA軸が働き、コルチゾールが分泌される。これ自体は身を守る正常な反応
  • コルチゾールは悪者ではない。 朝高く夜低い「山型のリズム」が健康な姿。問題は量ではなくリズムの崩れ
  • ③血糖を上げる働き(糖新生)とインスリンの乱れが、内臓脂肪の蓄積に関わりうる
  • 食欲と“好み”が変わる。 甘いもの・脂っこいものへの欲求が高まりやすい
  • 睡眠不足との悪循環。 眠れない→下がりきらない→食べすぎる→自責、のループ
  • ⑥筋肉が減り、基礎代謝の土台が下がりやすくなる

コルチゾールを抑える(=リズムを取り戻す)7つの習慣

  1. 睡眠を6〜8時間、起床時刻をそろえる
  2. 朝、光を浴びる(朝は上がるのが正常。朝の山を立てる)
  3. 運動は中強度・継続を軸に。追い込みすぎない
  4. 血糖の波を小さくする食べ方(朝食・食べる順番・決めて食べる間食)
  5. カフェインは量と時間を決める
  6. 寝酒に頼らない
  7. 1日5分の呼吸法とリラックスタイム(+一人で抱えない)

やってはいけないこと

  • ダイエットそのものを新しいストレッサーにしない
  • サプリで「下げよう」としない
  • 睡眠を削って運動しない
  • 「ストレスをなくす」ことをゴールにしない

そして——まずは1つだけで構いません。起床時刻をそろえる。カーテンを開ける。寝る前に4〜5分の呼吸。どれか一つが動き出すと、他の歯車も回りはじめます。

睡眠と体重の関係をさらに知りたい方はなぜ睡眠不足だと太るのかを、代謝の土台づくりについては基礎代謝を上げる10の習慣をあわせてご覧ください。

あなたが夕方に甘いものへ手を伸ばしてしまうのは、意志が弱いからではありません。仕組みで起きていることは、仕組みで整えられます。 そして、強いストレスが続くときは、どうか一人で抱えず、医療機関や公的な相談窓口を頼ってください。


ストレスに負けない体づくりは、RBDジムへ(熊本市南区・南熊本)

「自己流では続かない」
「ストレスで食べてしまう自分を、責めるのはもうやめたい」
「ホルモンや代謝のことを踏まえて、無理のない計画を立てたい」

そんな方は、熊本市南区・南熊本のパーソナルジムRBDの無料カウンセリングをご利用ください。東大薬学部卒・薬剤師国家資格を持つトレーナーが、運動・食事・生活リズムを一人ひとりの生活に合わせて、科学的根拠にもとづいてマンツーマンでサポートします。追い込むことが目的のトレーニングではなく、続けられる強度と、破綻しない食事管理をご提案します。

記事の中でお伝えしたとおり、一人で頑張らないことには、生理学的な意味があります(Heinrichs 2003)。誰かと一緒に取り組むこと自体が、ストレスと向き合う力になりえます。

  • 無料カウンセリング受付中(押し売りは一切ありません)
  • マンツーマン・複数名・オンライン指導にも対応(通いづらい方・遠方の方も)
  • 電話:080-5259-3762(受付11:00〜21:00/月曜定休)
  • Web予約:HotPepper Beautyから24時間受付
  • 所在地:〒862-0963 熊本県熊本市南区出仲間9-5-10 スペーシアビル4F(南熊本エリア/南熊本駅から車で約5分)

仕事も家庭も忙しいなかで、ここまで読んでくださったこと自体が、すでに大きな一歩です。まずは無料カウンセリングで、いまの生活とお悩みをお聞かせください。リバウンドしにくい設計を目指したメソッドで、あなたのペースに寄り添います。


主な参考・出典

公的機関

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレス」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/keywords/stress.html
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「休養・こころの健康」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart
  • 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html
  • 厚生労働省「こころの耳」ストレス軽減ノウハウ https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/
  • 厚生労働省「こころの耳」15分でわかるセルフケア https://kokoro.mhlw.go.jp/selfcare/data/e-learning.pdf

研究論文

  • Epel ES et al. Psychosomatic Medicine 62(5):623-632, 2000 https://journals.lww.com/bsam/abstract/2000/09000/stress_and_body_shape__stress_induced_cortisol.5.aspx
  • Adam TC & Epel ES. Physiology & Behavior 91:449-458, 2007 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17543357/
  • Chao AM et al. Obesity 25(4):713-720, 2017 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/oby.21790
  • Tomiyama AJ, Dallman MF, Epel ES. Psychoneuroendocrinology 36(10):1513-1519, 2011 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21906885

その他

  • 一般社団法人 日本栄養検定協会「ストレスが多くなると太りやすい?コルチゾールの働きとは?」 https://eiyokentei.or.jp/blog/3715/
  • 山梨県厚生連 健康管理センター「セロトニンを増やす方法とは?」 https://www.y-koseiren.jp/column/season/3224

文責

白木 勝也
RBDジム オーナー・トレーナー
東大薬学部卒・薬剤師国家資格保有。熊本市南区を拠点に、理論に基づいた「リバウンドしにくい設計を目指したメソッド」で多くの女性のボディメイクをサポート。

contactお問い合わせ

ご質問・ご相談など、なんでもお気軽にご相談ください。

Web予約