「ダイエットを頑張っているのに、ある時期からピタッと体重が落ちなくなった」
「チートデイをやれば停滞期を抜けられると聞いたけれど、本当に効果があるの?」
「好きに食べて、結局太ってしまわないか不安」
停滞期に直面し、こうした疑問を抱えてこの記事にたどり着いた方は多いのではないでしょうか。SNSや雑誌で「チートデイ」という言葉を見かけ、自分も試してみるべきか迷っている——そんな方に向けて、まず結論からお伝えします。
チートデイは、正しく使えば停滞期やモチベーション維持の助けになりうる手段ですが、「好きなだけ食べていい免罪符」ではありません。 効果には個人差があり、そもそも向かない人もいます。仕組みと条件を理解せずに「ただの暴飲暴食」をしてしまうと、ダイエットを遠回りさせるだけになりかねません。
この記事では、東大薬学部卒・薬剤師国家資格を持つトレーナーの視点から、次の3つを誠実にお伝えします。
- チートデイの仕組みと「効果の程度」(停滞期の正体・レプチン・代謝のしくみを研究をもとに)
- チートデイの正しいやり方(頻度・摂取カロリー・食べ物・翌日の過ごし方)
- 向き不向きと注意点(やっていい人・やらない方がいい人・失敗パターン)
なお、本記事は厚生労働省などの公的資料や、海外の研究論文を中心に構成しています。「チートデイをやれば必ず痩せる」といった保証ではなく、仕組みを理解して、自分に必要かどうかを冷静に判断するための土台として読んでいただければ幸いです。
栄養や代謝の反応には個人差があることを、あらかじめお伝えしておきます。

チートデイとは?「停滞期」と「飢餓状態」の関係
そもそもチートデイとは何なのか。なぜ停滞期に語られるのか。まずは言葉の正しい意味と、その背景にある体のしくみから整理しましょう。ここを誤解したまま実践すると、効果が出ないどころか逆効果になりかねません。
チートデイの定義——「計画的にカロリーを増やす日」
「チート(cheat)」は英語で「ズルをする」という意味です。ダイエット中、いつもの食事制限を一時的に解除し、意図的に摂取カロリーを増やす日を「チートデイ」と呼びます。語感から「好きなものを好きなだけ食べる日」と理解されがちですが、これは大きな誤解のもとです。
本来のチートデイは、あくまで「計画的に」カロリーや栄養を補給する日です。何を、どれくらい、どんな質で食べるかを設計したうえで行うもので、無計画に揚げ物やお菓子、お酒を際限なく流し込むのは、チートデイではなく単なる「暴飲暴食(過食)」です。この2つは似て非なるものだと、最初に押さえてください。
| |
チートデイ(計画的な補給) |
暴飲暴食(ただの過食) |
| 目的 |
停滞対策・心理的リフレッシュ |
欲求の発散のみ |
| 量 |
あらかじめ上限を決める |
上限なし・満腹を超える |
| 質 |
栄養価の高いものを中心に |
高カロリー・低栄養に偏りがち |
| 頻度 |
条件を満たしたときだけ |
衝動的・不規則 |
なぜ停滞するのか——減量で体が省エネに傾く「代謝適応」
ダイエットを続けていると、最初は順調に落ちていた体重が、ある時期からなかなか動かなくなります。これが「停滞期」です。停滞の主な原因の一つと考えられているのが、代謝適応(適応的熱産生/adaptive thermogenesis) と呼ばれる体の反応です。
私たちの体には、生命を維持するために環境へ適応するしくみ(ホメオスタシス=恒常性)が備わっています。食事制限でエネルギーが入ってこない状態が続くと、体は「飢餓状態かもしれない」と判断し、消費するエネルギーを抑えて省エネモードに切り替えようとします。その結果、見かけ上の消費エネルギーが下がり、同じように頑張っても体重が落ちにくくなるのです。
加えて、減量にともなって体重そのものが軽くなれば、必要なエネルギーも減ります。厚生労働省の情報サイトでも、基礎代謝は骨格筋量(筋肉の量)と関係が深く、筋肉が減るほど消費エネルギーは少なくなると説明されています(出典: 厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」)。極端な食事制限で筋肉まで落ちると、この「省エネ化」がさらに進みやすくなります。
チートデイは、この「飢餓状態のシグナル」を一時的に緩め、「エネルギーは十分にあるから省エネモードを解除してよい」と体に伝える——という発想で語られる手段です。ただし、後ほど詳しく見るように、この効果がどこまで確実なのかは、慎重に考える必要があります。
薬剤師トレーナーの視点では——停滞期は「失敗のサイン」ではなく、体が変化に適応している自然な過程です。ここで焦って食事をさらに減らすと、省エネ化と筋肉量の低下に拍車をかけ、かえって痩せにくい体に近づいてしまうことがあります。チートデイは、この「飢餓シグナル」を緩めるための一つの選択肢として語られますが、万能の特効薬ではありません。まずは「停滞=代謝適応」という正体を理解することが、対策の第一歩です。停滞期そのものの多面的な対策は、ダイエットの停滞期を抜け出す7つの方法もあわせてご覧ください。
チートデイは本当に効果がある?科学的に分かっていること

「チートデイをやると代謝が爆上がりして一気に痩せる」——そんな表現を目にしたことがあるかもしれません。しかし、研究で分かっていることは、もう少し控えめで誠実なものです。ここはチートデイを理解するうえで最も大切な部分なので、丁寧に見ていきましょう。
レプチンとは——食欲と代謝に関わるホルモン
チートデイの効果を語るとき、必ず登場するのが「レプチン」というホルモンです。
レプチンは、主に脂肪細胞から分泌されるホルモンで、脳に働きかけて食欲を抑えたり、エネルギー消費に関わったりするとされています。食事をしっかり摂って体のエネルギーが満たされているときは分泌が増え、「もう食べなくていい」というブレーキの役割を果たします。
問題は、ダイエットで食事制限や低栄養の状態が続くと、このレプチンが低下しやすいことです。レプチンが下がると、食欲が増し、体は省エネに傾きやすくなると考えられています。チートデイは、「一時的にしっかり食べることでレプチンを回復させ、食欲や代謝のバランスを整える」という理屈で説明されることが多いのです。
「食べれば代謝が上がる」はどこまで本当か
ここが、多くの記事が踏み込まない、しかし最も重要なポイントです。「チートデイでレプチンが増えて代謝が上がる」という説明は、どこまで本当なのでしょうか。
参考になるのが、健康な女性を対象にしたスイス・ローザンヌ大学などの研究です(Dirlewanger M ら, 2000年, International Journal of Obesity)。この研究では、健康な女性に炭水化物を3日間、必要量より多めに摂ってもらう(オーバーフィーディング)実験を行いました。その結果は次のとおりです。
- 血中のレプチンは約28%増加した
- 24時間のエネルギー消費量は約7%増加した
- しかし、基礎代謝(安静時の代謝)そのものは変化しなかった
- 脂質を多く摂った場合は、レプチンも消費量も有意な変化はみられなかった
- さらに、レプチンの変化と消費量の変化に相関は見られず、「レプチンが消費を押し上げる」とは言い切れないと結論づけられた
(出典: Dirlewanger M, et al. Int J Obes. 2000;24(11):1413-1418.)
つまり、炭水化物をしっかり補給すると、レプチンや一時的な総消費エネルギーは上がりうるものの、基礎代謝そのものを確実に押し上げるとまでは言えない、というのが研究から見えてくる姿です。しかも、これは「健康な女性」を対象にした短期間の実験であり、すべての人にそのまま当てはまるわけではありません。
ここから誠実にお伝えできるのは、「チートデイで代謝が劇的に上がって一気に痩せる」とは言い切れないということです。効果は限定的で、個人差も大きい。「食べれば食べるほど痩せる」といった話ではないのです。
チートデイ(1日)より「リフィード」「ダイエットブレイク」?
実は、ダイエットの研究の世界では、「1日だけ大量に食べるチートデイ」よりも、もう少し計画的でゆるやかな設計のほうが注目されています。混同されがちな3つの言葉を整理しておきましょう。
- チートデイ:1日だけ制限を解除し、カロリーを大きく増やす日。心理的な解放の意味合いが強い。
- リフィード:1〜数日、主に炭水化物を計画的に増やすこと。「ズル」ではなく栄養補給として位置づける考え方。
- ダイエットブレイク:数日〜2週間ほど、カロリーを維持レベル(減らさない量)に戻す期間を設ける設計。
これに関して、興味深いのがオーストラリアの研究グループによる「MATADOR study」です(Byrne SM ら, 2018年, International Journal of Obesity)。肥満の男性51名を、「休みなく連続して食事制限を続ける群」と、「2週間制限したら2週間は維持カロリーに戻す、を繰り返す群(=制限に休みを挟む)」に分けて比較しました。
その結果、制限に休みを挟んだ群のほうが、体重・体脂肪の減少が大きく、減量にともなう代謝の抑制(適応的熱産生)も和らいだと報告されています(出典: Byrne SM, et al. Int J Obes. 2018;42(2):129-138.)。
ただし注意したいのは、この研究の対象が肥満の男性であり、女性や標準体型の人にそのまま当てはめられるわけではないことです。それでも、「無理な制限を延々と続けるより、計画的に休みを挟むほうが、結果的に効率がよいことがある」という示唆は、チートデイを考えるうえでとても重要です。
薬剤師トレーナーの視点では——研究を正直に読み解くと、「チートデイで代謝が爆上がりして痩せる」という派手な期待は、いったん脇に置くべきだと分かります。レプチンや一時的な消費は上がりうるものの、基礎代謝そのものを押し上げる確実な根拠は乏しく、効果は限定的で個人差があります。むしろ本質的に大切なのは、1日だけ暴発するチートデイより、「無理な制限をしすぎない設計」そのものです。MATADOR研究が示すように、計画的に休みを挟むほうが代謝の抑制を和らげうる。私たちが「リバウンドしにくい設計」を重視するのは、こうした知見が背景にあります。基礎代謝のしくみは基礎代謝を上げる10の習慣もご参照ください。
チートデイの正しいやり方【実践編】

仕組みと「効果の程度」を理解したうえで、いよいよ実践です。ここでお伝えする数値は、あくまで目安であり、諸説あります。ご自身の体や状況に合わせて、慎重に調整してください。「これさえやれば必ず成功する」という唯一の正解はありません。
頻度の目安——体脂肪率・ダイエットの段階別
チートデイの頻度に、医学的に確立された「正解」はありません。各情報源でも幅があり、週1回〜月1回程度の範囲で語られることが多いようです。一般的に、体脂肪率が低く絞れている人ほど停滞しやすく、チートデイの頻度を高めに語られる傾向があります。逆に、体脂肪率が高い段階では、そもそもチートデイの必要性は低いとされています。
以下は、あくまで一般的に語られる目安です(数値は諸説あり、個人差があります)。
| 体脂肪率の目安 |
頻度の目安 |
考え方 |
| 男性 約15%未満/女性 約25%未満 |
1〜2週間に1回程度 |
絞り込みが進み停滞しやすいため、補給の意味が出やすい |
| 男性 約15〜25%/女性 約25〜35% |
2週間〜1ヶ月に1回程度、または不要なことも |
まずは食事と運動の基本を優先 |
| 男性 約25%以上/女性 約35%以上 |
基本的に不要とされる |
消費>摂取が続いていれば、まだ落ちやすい段階 |
迷ったときの原則はシンプルです。「迷ったら頻度は少なめに」。 チートデイは多ければよいものではなく、頻度が多すぎれば単なるカロリーオーバーになります。
摂取カロリーの考え方——極端に増やしすぎない
「チートデイ=無制限」ではない以上、摂取カロリーの目安を持っておくことが大切です。基準になるのが、TDEE(総消費エネルギー量/1日に消費する総カロリー) です。
考え方としては、ダイエット中に削っているカロリーを、チートデイにはメンテナンスカロリー(体重を維持できる量)程度かそれより少し多いくらいに戻す、というのが一つの目安とされています。「いつもの倍も三倍も食べる」のではなく、「制限していた分を、ふだんの必要量あたりまで戻す」イメージです。
カロリー計算はあくまで目安であり、1kcal単位で厳密にコントロールする必要はありません。大切なのは、「際限なく食べる日」ではなく「上限を決めて補給する日」という枠組みを持つことです。
何を食べる?——「栄養価の高いもの」で増やす
チートデイで何を食べるかは、効果を左右する重要なポイントです。各情報源で共通して推奨されているのは、栄養価の高い食べ物でカロリーを増やすことです。具体的には次のようなものです。
- たんぱく質:肉・魚・卵・大豆製品など。筋肉を守るため、チートデイでもしっかり確保する
- 低GIの炭水化物:玄米・全粒粉のパンやパスタ・そば・さつまいもなど。血糖値の急上昇を抑えやすい
- 良質な脂質:青魚・ナッツ・オリーブオイルなど
- ビタミン・ミネラル・食物繊維:野菜・果物・きのこ・海藻
一方で、避けたい「NG例」もはっきりしています。
- 揚げ物・スナック菓子・菓子パンだけでお腹を満たす
- お酒を中心に飲む(アルコールは栄養補給の観点で優先度が低い)
- 「甘いものだけ」「ジャンクフードだけ」の偏った食事
これらは「高カロリー・低栄養」になりやすく、停滞対策どころか、ただのカロリーオーバーになりがちです。同じカロリーを増やすなら、体にとって意味のある栄養で増やす——これがチートデイの質を決めます。PFCバランス(たんぱく質・脂質・炭水化物の配分)の考え方は、PFCバランスとは?ダイエットの基本で詳しく解説しています。
一日の流れ——朝・昼にしっかり、夜は控えめに
同じカロリーでも、食べるタイミングを工夫すると体への負担を抑えやすくなります。一般的に推奨されるのは、活動量の多い朝〜昼にしっかり食べ、夜は控えめにする流れです。
- 前日:特別なことはせず、いつもどおりの食事に。前日から食べすぎる必要はありません
- 当日の朝・昼:エネルギーとして使われやすい時間帯に、しっかりと栄養を摂る
- 当日の夜:寝るまでの活動量が少ないため、量は控えめに。就寝直前の大量摂取は避ける
- 翌日:いつもの食事に戻す。「昨日食べたから」と極端に絶食しない(理由は後述)
薬剤師トレーナーの視点では——実践で最も大切にしてほしいのは、「増やすけれど、設計する」という姿勢です。何を、どれくらい、どの時間に食べるかをあらかじめ決めておく。これだけで、チートデイは「暴発」ではなく「補給」に変わります。とくにたんぱく質は、ダイエット中こそ不足しやすい栄養素です。チートデイだからと甘いものに偏らせず、主菜をしっかり置くこと。栄養の質を保つことが、翌日以降の体を整えることにつながります。
チートデイの失敗パターンと注意点
チートデイは、やり方を間違えると「ダイエットを遠回りさせる原因」になります。ここでは、よくある失敗パターンと、その回避法を整理します。先に失敗を知っておくことが、何よりの予防策です。
失敗1|「免罪符」化して暴飲暴食になる
最も多い失敗が、チートデイを「何を食べてもいい免罪符」と捉えてしまうことです。「今日はチートデイだから」と歯止めがなくなり、栄養価を無視して際限なく食べてしまえば、それは計画的な補給ではなく、ただの暴飲暴食です。
すでにお伝えしたとおり、チートデイの本質は「計画的にカロリーを増やすこと」。上限と質を決めずに行うチートデイは、ダイエットを後退させるリスクがあります。
失敗2|頻度が多すぎる/タイミングが間違っている
「停滞を抜けたいから」と頻度を増やしすぎると、トータルの摂取カロリーが増え、本末転倒になります。また、ダイエットを始めたばかりの初期や、順調に体重が落ちている時期にチートデイを行うのも、基本的に不要です。まだ体が省エネモードに入っていない段階では、チートデイの「飢餓シグナルを緩める」という理屈が当てはまりにくいからです。
チートデイは、「ある程度制限を続けて、停滞が一定期間続いたとき」に検討する手段。順調なときにわざわざ投入する必要はありません。
失敗3|翌日に体重が増えて落ち込む
チートデイの翌日、体重計に乗って「増えている」とショックを受け、ダイエットそのものをやめてしまう——これも非常によくある失敗です。しかし、ここは冷静になってください。
チートデイ翌日の体重増加の多くは、脂肪が増えたわけではありません。 その正体は、主にグリコーゲンと水分(むくみ)です。炭水化物を摂ると、体はそれを「グリコーゲン」という形で筋肉や肝臓に蓄えます。このとき、グリコーゲンは水分を伴って貯蔵される性質があるため、糖質や塩分、水分の摂取量が増えると、体重は一時的に数百グラム〜数キロ動くことがあります。
これは水分とグリコーゲンによる一時的な増加とされ、通常は数日(目安として2〜3日)で落ち着いていくと考えられています。冷静に考えてみてください。脂肪を1kg増やすには、一般に約7,200kcalもの余剰エネルギーが必要とされます。1日や2日の食事で、脂肪が一気に何キロも増えることは、現実的には考えにくいのです。「翌日に増えた=失敗」ではありません。
失敗4|罪悪感とセットになりやすい(心理面のリスク)
意外と見落とされがちなのが、心理面のリスクです。「チート(ズル)」「ご褒美」という枠組みで食べることは、人によっては罪悪感やストレスと結びつき、食行動の乱れと関連しうると指摘する研究レビューもあります(チートミールに関する生理・心理反応のスコーピングレビュー, Tsang JH ら, 2025年, Nutrition Reviews)。
「ズルをした」という後ろめたさが、かえって次の過食を招いたり、食事への向き合い方を不安定にしたりすることがある——という視点です。だからこそ、「ご褒美・チート」という言葉のニュアンスよりも、「計画的な栄養補給(リフィード)」として淡々と位置づけるほうが望ましいと考えられます。もし、食べることへの強い不安や、過食・拒食の傾向に心当たりがある場合は、無理にチートデイを取り入れず、専門家に相談してください。
薬剤師トレーナーの視点では——これらの失敗に共通するのは、「設計の不在」です。感情にまかせて食べるのか、計画にもとづいて補給するのか。同じ「たくさん食べる日」でも、この差は決定的です。とくに翌日の体重増加は、しくみを知っていれば落ち込む必要のないものです。グリコーゲンと水分による一時的な変動を、脂肪の増加と取り違えないこと。数字に振り回されず、しくみで理解する。これが、ダイエットを長く続けるためのメンタルを守ってくれます。
チートデイをやっていい人・やらない方がいい人

ここまで読んで、「自分はチートデイをやるべきなのか?」と思った方も多いでしょう。チートデイは、すべての人に必要なものではありません。ここで一度、向き不向きを整理しておきます。
チートデイを検討してもよい人の目安
次のような条件が重なる場合、チートデイが選択肢に入ってきます(いずれも目安であり、個人差があります)。
- ある程度の期間、きちんとカロリー制限を続けてきた
- 食事も運動も乱れていないのに、体重の停滞が2〜3週間以上続いている
- 体脂肪率が高すぎない段階まで絞れてきている
- 心理的にダイエットに疲れ、リフレッシュの必要を感じている
やらない方がいい人の目安
逆に、次のような場合は、チートデイは基本的に不要、もしくは避けたほうがよいとされます。
- ダイエットを始めたばかりで、まだ順調に体重が落ちている
- 体脂肪率が高い段階(一つの目安として男性25%以上・女性35%以上)。まだ消費が摂取を上回りやすく、チートデイの必要性は低い
- 食事制限や運動の基本がまだ整っていない
- 過食・拒食など、食行動に不安がある。罪悪感や過食の引き金になりうるため、自己判断は避け、専門家に相談を
迷ったときの原則は、ここでも「無理に取り入れない」です。チートデイは「やらないと痩せられない」ものではなく、あくまで停滞時の選択肢の一つにすぎません。
薬剤師トレーナーの視点では——「自分にチートデイが必要かどうか分からない」という方こそ、立ち止まってほしいタイミングです。停滞の原因は、代謝適応だけでなく、知らないうちに摂取カロリーが増えていた、記録が甘くなっていた、睡眠やストレスが乱れていた——など、さまざまです。チートデイを試す前に、まずは停滞の本当の原因を見極めること。原因が違えば、打つべき手も変わります。判断に迷うときは、専門家と一緒に状況を整理するのが、遠回りに見えて確実な道です。
チートデイより大切な「リバウンドしにくい設計」
最後に、この記事で最もお伝えしたいことを書きます。それは、チートデイは目的ではなく、あくまで「道具の一つ」にすぎないということです。
停滞やリバウンドの背景には、しばしば「極端な制限 → 我慢の限界 → 暴発 → 罪悪感 → さらに極端な制限」という悪循環があります。チートデイを単発で投入しても、この根っこにある「無理な制限」が変わらなければ、停滞や暴発は繰り返されてしまいます。
MATADOR研究が示したように、無理な制限を延々と続けるより、計画的に「休み」を挟むほうが、代謝の抑制を和らげ、結果的に効率がよいことがある——これは、チートデイという1日のイベントよりも、「ダイエット全体の設計」こそが本質だということを教えてくれます。
RBDジムが大切にしているのは、根性や我慢ではなく、「無理な制限をしない設計」でリバウンドしにくい体づくりを目指すという考え方です。チートデイが必要なほど追い込まれた制限を、そもそもしない。一生使える食事管理を身につけ、停滞も暴発も「設計」で防いでいく。チートデイは、その設計のなかで使うかどうかを判断する、数ある道具の一つにすぎないのです。
薬剤師トレーナーの視点では——「理論上、リバウンドしにくいメソッド」という私たちの考え方は、「絶対にリバウンドしない」と保証するものではありません。筋肉と代謝を守りながら、無理なく続けられる設計を組み立てる——その積み重ねが、結果としてリバウンドしにくさにつながる、という意味です。チートデイをやるかどうかも、その人の体脂肪率・ダイエットの段階・生活・心理状態によって答えが変わります。だからこそ、画一的なルールではなく、一人ひとりに合わせた設計が大切なのだと考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. チートデイをやれば、必ず停滞期を抜けられますか?
A. 残念ながら、「必ず抜けられる」とお約束できるものではありません。チートデイの効果には個人差があり、研究上も「レプチンや一時的な消費は上がりうるが、基礎代謝そのものを確実に押し上げる根拠は乏しい」とされています。停滞の原因が代謝適応ではなく、摂取カロリーの増加や生活リズムの乱れにある場合は、チートデイでは解決しません。まずは原因の見極めが大切です。
Q. チートデイの翌日に体重が増えました。失敗ですか?
A. 失敗ではない可能性が高いです。翌日の体重増加の多くは、脂肪ではなく、炭水化物の補給で蓄えられたグリコーゲンと水分(むくみ)による一時的なものとされています。通常は数日で落ち着いていくと考えられています。脂肪を1kg増やすには約7,200kcalの余剰が必要とされ、1日で脂肪が激増することは現実的に考えにくいので、数字に落ち込みすぎないでください。
Q. チートデイなら、何を食べてもいいんですか?
A. いいえ。チートデイは「計画的にカロリーを増やす日」であって、「何を食べてもいい日」ではありません。たんぱく質・低GIの炭水化物・良質な脂質・ビタミン/ミネラルなど、栄養価の高いもので増やすのがおすすめです。揚げ物・スナック・お酒だけで満たすのは、高カロリー・低栄養になりやすく、おすすめできません。
Q. 頻度はどれくらいが正解ですか?
A. 医学的に確立された「正解」はなく、諸説あります。一般的には、体脂肪率やダイエットの段階に応じて、週1回〜月1回程度の幅で語られます。体脂肪率が高い段階では基本的に不要とされます。迷ったときは「頻度は少なめに」が無難です。
Q. お酒やスイーツだけ食べてもいいですか?
A. おすすめしません。アルコールやお菓子は栄養補給の観点で優先度が低く、これらに偏ると「カロリーは高いのに栄養は乏しい」状態になりがちです。同じカロリーを摂るなら、体にとって意味のある栄養で増やすほうが、チートデイの目的に合っています。
Q. チートデイとリフィード・ダイエットブレイクの違いは?
A. ざっくり言うと、チートデイは1日だけ制限を解除する心理的な解放、リフィードは1〜数日かけて主に炭水化物を計画的に増やす栄養補給、ダイエットブレイクは数日〜2週間ほどカロリーを維持レベルに戻す期間を設ける設計です。研究の世界では、後者2つのような「計画的な設計」のほうが注目されています。
まとめ|チートデイは「計画的に使う道具」
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- チートデイは「好きなだけ食べていい免罪符」ではなく、計画的にカロリーを増やす日。暴飲暴食とは別物
- 停滞の正体は、減量で体が省エネに傾く代謝適応。チートデイはその「飢餓シグナル」を緩める発想
- 効果は限定的で個人差がある。研究では「レプチンや一時的な消費は上がりうるが、基礎代謝は不変」とされ、「食べれば代謝が上がって痩せる」とは言い切れない
- 1日のチートデイより、リフィードやダイエットブレイクといった「計画的な設計」のほうがエビデンスは注目されている
- 頻度・カロリー・食べ物は目安・諸説あり。迷ったら頻度は少なめ・栄養価で増やす・翌日は冷静に
- 翌日の体重増は主にグリコーゲンと水分で、脂肪ではない。数日で落ち着くとされる
- ダイエット初期・順調なとき・体脂肪率が高い人・食行動に不安がある人には不要、または避ける
- 本質は、チートデイそのものより「無理な制限をしないリバウンドしにくい設計」
チートデイは、正しく理解して使えば心強い「道具」になりますが、振り回されると遠回りのもとにもなります。「自分に必要かどうか分からない」と感じたら、無理に取り入れず、立ち止まって原因を見直すことをおすすめします。栄養や代謝の反応には個人差がありますので、ご自身の体と相談しながら、無理のない範囲で取り組んでくださいね。
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主な参考・出典
- Byrne SM, et al. “Intermittent energy restriction improves weight loss efficiency in obese men: the MATADOR study.” Int J Obes. 2018;42(2):129-138. https://www.nature.com/articles/ijo2017206 / https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5803575/
- Dirlewanger M, et al. “Effects of short-term carbohydrate or fat overfeeding on energy expenditure and plasma leptin concentrations in healthy female subjects.” Int J Obes. 2000;24(11):1413-1418. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11126336/
- Tsang JH, et al. “The Role of Cheat Meals in Dieting: A Scoping Review of Physiological and Psychological Responses.” Nutr Rev. 2025;83(11):2240-2252. https://academic.oup.com/nutritionreviews/article/83/11/2240/8162961 / https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12512235/
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-07-002.html
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
文責
白木 勝也
RBDジム オーナー・トレーナー
東大薬学部卒・薬剤師国家資格保有。熊本市南区を拠点に、理論に基づいた「リバウンドしにくい設計を目指したメソッド」で多くの女性のボディメイクをサポート。