「何日もお腹がスッキリしない」「薬に頼り切りになる前に、運動や生活習慣で自然に整えたい」——そんな思いで、この記事にたどり着いた方が多いのではないでしょうか。
結論からお伝えします。便秘のセルフケアでカギになるのは、「腸を動かす運動 × 食物繊維・水分 × 朝の習慣」の3つです。ツボ押しやお腹のマッサージは、この土台を整えたうえでの“あと一押し”のサポートと考えると、無理なく取り入れられます。
この記事では、東大薬学部卒・薬剤師トレーナーの視点から、なぜ運動で腸の動きが変わるのかというしくみに触れながら、自宅でできる運動・体操・ストレッチ・ツボを手順つきで紹介します。さらに、競合の多くが触れていない「便秘のタイプ別の出し分け」「下剤(便秘薬)との付き合い方」「受診を優先すべきサイン」まで、薬の知識をもつ立場から誠実に整理しました。
はじめに大切な前提をお伝えします。本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、便秘の診断・治療を目的とするものではありません。紹介する方法に医療効果を保証するものはなく、効果の感じ方には個人差があります。血便・急な体重減少・強い腹痛など、後述するレッドフラッグに当てはまる場合は、自己ケアを続けず、医療機関の受診を優先してください。
そもそも、なぜ運動で便秘が変わるのか(腸が動くしくみ)
ケアを始める前に、「なぜ体を動かすとお腹に良いのか」を知っておくと、続けるモチベーションが変わります。まずは便秘そのものの捉え方から整理しましょう。
便秘とは「快適に出せない」状態(回数だけではない)
「便秘=何日も出ないこと」と思われがちですが、医学的にはもう少し広い意味で捉えられています。
慢性便秘症の診療ガイドラインでは、便秘はおおむね「本来体外に排出すべき糞便を、十分な量かつ快適に排出できない状態」として説明されています(出典: 慢性便秘症診療ガイドライン2017/味村俊樹「慢性便秘症の診断と治療」日本内科学会雑誌)。つまり、毎日出ていても残便感がある・硬くて出しにくい・強くいきまないと出ないといった「快適に出せない」状態も、広い意味での便秘に含まれます。
薬剤師トレーナーの視点では——回数だけにとらわれないことが大切です。「3日に1回でもスッキリ出ていて、本人が困っていない」なら、必ずしも治療が必要とは限りません。逆に「毎日出ていてもいつも残った感じがする」なら、ケアを見直す価値があります。自分の“快適に出せている感覚”を基準にする——これが腸活の出発点です。
運動が腸に効く5つの理由
では、なぜ運動が便通に関わるのでしょうか。一般に、次の5つの経路が関係するとされています。
| 経路 |
体の中で起きること |
| ① 蠕動運動(ぜんどう)の促進 |
体を動かすことで腸の動き(便を運ぶ波打つ動き)が刺激されるとされる |
| ② 自律神経の調整 |
運動後にリラックスを担う副交感神経が優位になりやすく、腸が動きやすい状態をサポート |
| ③ 血流の改善 |
お腹まわりの血行が促され、腸の働きを支える |
| ④ 腹圧(いきむ力)の補助 |
腹筋・腸腰筋が働くことで、排便時に必要な「いきむ力」を支える |
| ⑤ 腸内環境への影響 |
適度な運動習慣は、腸内環境を整える生活リズムの一部になる |
(出典: 阪急塚口いのうえ消化器内科・内視鏡クリニック「運動が便秘を改善するメカニズム」/神奈川県衛生研究所「運動とおなかの調子」衛研ニュースNo.206)
学会の最新ガイドラインでも、慢性便秘症に対して「適切な食事・運動・お腹のマッサージは症状の改善に有効であり、行うことが提案される」という位置づけが示されています(出典: 便通異常症診療ガイドライン2023/日経メディカル ガイドライン解説)。また、「日ごろよく体を動かす人は、運動不足の人に比べて便秘が少ない傾向」を示す報告もあります(※具体的な数値には幅があり、断定はできません。出典: 健栄製薬コラム)。
薬剤師トレーナーの視点では——運動・食事・習慣が「土台」で、ツボや薬は「補助」です。便秘の対策というと、すぐツボや市販薬を探しがちですが、土台が抜け落ちていると一時しのぎになりやすいもの。まずは腸が自分で動きやすい体と生活を育てる——RBDが大切にする「自然に整う」「戻りにくい設計」の考え方は、ここにつながっています。
あなたの便秘はどのタイプ?(弛緩性・けいれん性・直腸性)
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。便秘にはタイプがあり、タイプによって“効くケア”が変わります。 多くの記事が「便秘にはこの運動」と一律に勧めますが、実はけいれん性タイプには強い刺激が逆効果になりうるなど、注意が必要なのです。
まず大前提として、便秘は大きく「機能性便秘(腸の働きの問題)」と「器質性便秘(腫瘍や狭窄など腸の形の問題)」に分けられます。器質性は医療機関での対応が必要です(受診の目安は後述)。ここで扱うのは、生活習慣で整えやすい機能性便秘の3タイプです。
弛緩性(運動不足タイプ)=動かして刺激するのが有効
大腸の蠕動運動が弱まり、便が腸内に長くとどまって水分を吸われ、硬くなりやすいタイプです。運動不足・筋力低下・食物繊維や水分の不足が背景にあり、日本人にもっとも多いとされます(出典: 済生会「弛緩性便秘」)。お腹が張る、便が硬い、といったサインが目安です。
→ 対策: 運動・体操・腹筋など、腸をしっかり動かすケアが向きます。後述の運動メニューはこのタイプと相性が良いとされます。
けいれん性(ストレスタイプ)=強い刺激はNG、ゆるめる・リラックス優先
ストレスなどで自律神経のバランスが乱れ、腸が緊張しすぎて便がうまく運ばれず、コロコロした便や、便秘と下痢を繰り返すといったサインが出やすいタイプです(出典: 金沢消化器内科・内視鏡クリニック「便秘の3タイプ」/みついわクリニック)。
→ 対策: このタイプでは、強い腹筋運動や強い刺激のマッサージは、かえって腸の緊張を強めてしまうおそれがあるとされます。激しく動かすより、深呼吸・軽いストレッチ・ぬるめの入浴など、自律神経をゆるめてリラックスするケアが向きます。
薬剤師トレーナーの視点では——ここを混同している方がとても多いです。「便秘=とにかく腹筋・とにかく腸もみ」と思って頑張った結果、けいれん性タイプの方がかえってお腹を痛くしてしまう、というのは珍しくありません。便秘と下痢を繰り返す・ストレスが強い時期に悪化する、という方は、“動かす”より“ゆるめる”を意識してみてください。
直腸性(便意を我慢タイプ)=朝の排便リズムを取り戻す
便が直腸まで来ているのに、忙しさや我慢の習慣で便意のセンサーが鈍くなり、出しそびれてしまうタイプです。トイレを我慢しがちな方に多いとされます。
→ 対策: 運動に加えて、朝の排便リズムを整える・便意を我慢しないことが軸になります(後述の「腸活習慣」を参照)。
簡単セルフチェック(見当をつける目安/断定はしない)
次の表は、あくまでおおよその見当をつけるための目安です。きっちり1つに分類できるものではなく、複数の要素が混ざることもあります。診断ではない点にご注意ください。
| タイプ |
起きやすいサイン |
背景になりやすいこと |
向きやすいケアの方向 |
| 弛緩性 |
お腹が張る・便が硬い・出にくい |
運動不足・筋力低下・食物繊維/水分不足 |
運動・体操で動かす |
| けいれん性 |
コロコロ便・便秘と下痢を繰り返す・残便感 |
ストレス・自律神経の乱れ |
ゆるめる・リラックス(強い刺激は避ける) |
| 直腸性 |
便意を感じにくい・出しそびれる |
便意の我慢ぐせ・朝が忙しい |
朝の排便習慣・便意を逃さない |
便秘解消におすすめの運動・体操・ストレッチ
ここからは具体的な運動メニューです。主に弛緩性(運動不足)タイプに向いた内容で、けいれん性の方は「ゆるめる」系を中心に、強い負荷は避けてください。
共通ルール: どの運動も呼吸を止めず、痛くなく気持ちいい範囲で行います。反動はつけず、ストレッチは1か所20〜30秒が目安です(出典: e-ヘルスネット「ストレッチングの実際」)。食後すぐの激しい運動や体調不良時は避け、痛みや気分が悪くなったら中止してください。妊娠中・産後・持病のある方は、事前に医療機関へご相談ください。
① ウォーキング・軽い有酸素運動(まず土台)
もっとも手軽で、全身の血流と腸の動きをやさしく促すとされる運動です。
- 目安: 1日20〜30分、少し息が弾む程度。連続でなくても、こまめな合計でOK。
- 狙い: 全身の血流改善と、リズミカルな動きによる腸への刺激。
- やり方: 背すじを軽く伸ばし、いつもより少し大股で。腕を振って、お腹のあたりも自然にねじれるよう意識します。
- 効くポイント: 朝の散歩は、後述の「胃結腸反射」とも相性が良いとされます。通勤や買い物のついででも十分。
- NG例: 食後すぐの早歩き / 体調不良時の無理
② お腹ひねり体操・ラジオ体操(腸に“ひねり”の刺激)
座ったままや立ったままでできる、お腹をねじる体操です。
- 回数: 左右各5〜10回、ゆっくり。
- 狙い: 上半身のひねりで、腸まわりにやさしい刺激を与える。
- やり方: 足を肩幅に開いて立つ(または椅子に浅く座る)。両手を軽く広げ、息を吐きながら上半身を左右へゆっくりねじる。
- 効くポイント: 勢いではなく、呼吸に合わせてゆっくり。ラジオ体操の「体をねじる運動」も同じ要領で取り入れられます。
- NG例: 反動で勢いよくねじる / 痛む向きまで無理にねじる
③ 腸腰筋・体幹を使う運動(いきむ力の土台)
排便時の「いきむ力」を支える腹筋・腸腰筋をやさしく刺激します。ただし、けいれん性タイプの方は強い腹筋運動を避けてください。
- 回数: 10回前後を1〜2セット、無理のない範囲で。
- 狙い: 腹圧を支える筋肉に、軽い刺激を入れる。
- やり方(膝上げ): 椅子に浅く座り背すじを伸ばす。息を吐きながら、片方の太ももを軽くお腹へ引き上げ、ゆっくり戻す。左右交互に。
- 効くポイント: お腹の奥に軽く力が入る感覚があればOK。強い腹筋運動より“軽く・回数”で十分です。
- NG例: 反動で勢いをつける / けいれん性タイプで強い負荷をかける / 痛みを我慢する
薬剤師トレーナーの視点では——腹筋というと「シットアップを何十回」を想像しがちですが、便通のサポートに必要なのは“いきむ力を支える程度”の刺激で十分です。やりすぎてお腹を緊張させると逆効果になることも。腹圧や体幹の土台づくりに関心がある方は、安全な進め方をまとめた体幹トレーニング(プランク)ガイドもご参照ください(※お腹に強い不調がある方は無理をしないでください)。
④ ヨガ系ポーズ(ガス抜き・コブラで腸まわりをゆるめる)
腸まわりをやさしく刺激しつつ、リラックスもできるため、けいれん性タイプの方にも比較的取り入れやすい動きです。
- ガス抜きのポーズ: 仰向けで両膝を抱え、息を吐きながら胸の方へゆっくり引き寄せる。お腹がやさしく圧迫される。15〜30秒。
- コブラのポーズ: うつ伏せで両手を胸の横につき、息を吸いながら上体をゆっくり起こす。お腹の前側がのびる。腰に不安があれば浅めに。
- 効くポイント: どちらも呼吸を止めず、痛くない範囲で。反らせて痛む方は無理をしない。
- NG例: 腰を強く反らせて痛める / 呼吸を止めて力む
⑤ 「の」の字マッサージ・腸もみ(大腸の走行に沿って)
お腹の上から、大腸の流れに沿ってやさしくさするセルフマッサージです。けいれん性タイプの方は、強く押さず軽くなでる程度に。
- 回数: 時計回りに「の」の字を、ゆっくり10〜20周。
- 狙い: 大腸の走行(右下→右上→左上→左下)に沿って、お腹の上からやさしく刺激する。
- やり方: 仰向けでひざを立て、おへそを中心に、手のひらで時計回りに「の」の字を描くようにさする。
- 効くポイント: 力任せに押さず、痛気持ちいい程度。お風呂上がりや就寝前など、リラックスできる時間に。
- NG例: 食後すぐ / 強く押し込みすぎる / 痛みを我慢する
便秘におすすめのツボ(セルフケアのあと一押し)
東洋医学では、便通のセルフケアとして用いられるとされるツボがいくつか紹介されています。なお、ツボの効果には科学的に十分に確立されていない部分も多く、医療効果を保証するものではありません。あくまで「すっきり感をサポートするセルフケアとして紹介されることが多い」という位置づけで、リラックスのきっかけとして取り入れてみてください(出典: ロート製薬/養命酒/森永乳業 各コラム)。
お腹・手・脚の代表的なツボ
| ツボ |
位置の目安 |
紹介されることが多い使われ方 |
| 天枢(てんすう) |
おへそから左右に指3本分ほど外側 |
お腹の調子を整える目的で用いられるとされる |
| 大巨(だいこ) |
天枢から指3本分ほど下 |
下腹部のケアとして紹介される |
| 大腸兪(だいちょうゆ) |
腰の骨盤の高さ・背骨から指2本分ほど外側 |
腰側から腸まわりをいたわる目的で |
| 合谷(ごうこく) |
手の親指と人差し指の骨が交わる手前のくぼみ |
万能のツボとして紹介されることが多い |
| 足三里(あしさんり) |
膝のお皿の外下から指4本分ほど下 |
胃腸の調子を整える目的で用いられるとされる |
ツボ押しのコツ
- 痛気持ちいい強さで、ゆっくり押してゆっくり離す。
- 深呼吸をしながら、力を入れすぎない。
- 1か所あたり数秒×数回を目安に、継続が前提。
- 妊娠中の方は刺激するツボに注意が必要とされるため、事前に専門家へ相談してください。
薬剤師トレーナーの視点では——ツボやマッサージは「リラックスして副交感神経を働かせるきっかけ」として価値があると考えています。とくにけいれん性タイプの方にとっては、“ゆるめる”時間そのものが意味を持ちます。ただし、ツボだけで便秘がすべて解決するわけではありません。運動・食事・習慣という土台があってこその“あと一押し”、と捉えてください。
運動効果を底上げする「腸活」習慣(食物繊維・水分・朝食・排便リズム)
運動の効果を引き出すには、食事と生活リズムがセットです。ここはむしろ運動以上に土台と言える部分。公的機関の情報をもとに整理します。
食物繊維は水溶性・不溶性をバランスよく
食物繊維は腸活の主役です。e-ヘルスネット(厚生労働省)では、食物繊維の摂取量を増やすことが、排便量や排便回数の増加、消化管の通過時間の短縮と関係することが報告されていると紹介されています(出典: e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」)。学会の検討でも、食物繊維は慢性機能性便秘症に対して用いられる選択肢として扱われています(出典: Minds CQ36)。
ポイントは2種類をバランスよくとることです。
- 不溶性食物繊維(豆類・きのこ・根菜・穀類など): 便のかさを増やし、腸を刺激する。
- 水溶性食物繊維(海藻・果物・大麦・オクラなど): 便をやわらかく保ち、腸内細菌のエサになる。
摂取量の目安として、e-ヘルスネットでは成人で1日あたり男性20g以上・女性18g以上程度が示されていますが、日本人の平均摂取量は不足傾向にあるとされています(出典: e-ヘルスネット)。
薬剤師トレーナーの視点では——不溶性ばかり大量にとると、水分不足だと逆に便が硬くなってお腹が張ることもあります。「水溶性も忘れずに、水分とセットで」が安全な増やし方。ダイエット中で食事量を減らしすぎると食物繊維も不足しがちなので、量を減らすより“質を整える”意識が大切です。
水分と発酵食品で腸内環境をいたわる
便をやわらかく保つには水分も欠かせません。ただし、「水を飲めば便秘が治る」と断定できるものではなく、とりすぎが良いわけでもありません。こまめに、無理のない範囲で。あわせて、ヨーグルトや納豆などの発酵食品で善玉菌をいたわるのも、腸内環境を整える生活の一部になります。
朝食と胃結腸反射=朝が排便のゴールデンタイム
空っぽの胃に食べ物が入ると、その刺激で大腸が動き出す「胃結腸反射」が起こります。この反射は朝にもっとも強く働きやすいとされ、だからこそ朝食を抜かないことと、朝にトイレへ向かう余裕を作ることが、排便リズムづくりの近道になります(出典: 習志野船橋よしだ内科・おなかクリニック「胃結腸反射とは」)。
便意を我慢しない/同じ時間にトイレへ
直腸性タイプの対策の核がここです。便意は我慢を繰り返すと感じにくくなるとされます。便意を感じたら後回しにしない、そして毎朝決まった時間にトイレへ座る習慣をつけることで、リズムが整いやすくなります。出なくても焦らず、数分座ってみるところから。
薬剤師トレーナーの視点では——「朝起きてコップ1杯の水→朝食→トイレ」という流れを、自分なりのルーティンとして固定するのがおすすめです。胃結腸反射という体のしくみを“味方につける”だけで、薬に頼る前にできることはかなり増えます。自律神経や生活リズムの整え方は睡眠の質を上げる生活習慣も参考になります。
やってはいけない・効果が出にくいNG(逆効果)
良かれと思った行動が、かえって便秘を悪化させることもあります。ここで整理しておきましょう。
- けいれん性タイプで強い刺激を続ける: 強い腹筋運動・強く押す腸もみは、腸の緊張を強めるおそれ。ゆるめるケアに切り替えを。
- 痛みを我慢して続ける: 痛みは中止のサイン。「痛いほど効く」は誤解です。
- 反動をつけた激しい動き: 筋を痛めるリスクが高まります。ゆっくり・呼吸に合わせて。
- 食後すぐの激しい運動: 消化に負担。食後は時間をおいてから。
- 水分・食事を極端に減らすダイエット: 食物繊維も水分も不足し、便が硬くなりやすい落とし穴です。
- 刺激性下剤の自己判断での連用(下で詳述): 安易な常用は避けたいポイントです。
【薬剤師トレーナー解説】下剤(便秘薬)との付き合い方
ここは、薬の知識をもつ立場として、もっとも誠実にお伝えしたいパートです。
市販の便秘薬には、作用の異なるいくつかの種類があります(便のかさを増やすもの、便に水分を含ませるもの、腸を直接刺激するものなど)。なかでも腸を直接刺激するタイプ(刺激性下剤)は、効きが分かりやすい一方で、自己判断で長く使い続けると、習慣化したり効きにくくなったりする懸念があるとされ、注意が必要です(出典: 愛知県薬剤師会 薬事情報センター「便秘」)。
学会のガイドラインでも、便秘の対応は「まず生活習慣・食事療法から始め、改善しなければ薬物療法を検討する」という順序が基本とされています(出典: 便通異常症診療ガイドライン2023/日経メディカル解説)。
薬剤師トレーナーの視点では——お伝えしたいのは「薬が悪い」ということでは決してありません。必要な場面では薬は心強い味方です。ただ、順番が大切だということ。まず運動・食物繊維・水分・朝の習慣で腸が自分で動く状態を育て、それでも難しいときに、薬の使い方を医療機関や薬剤師に相談する——この順序が、長い目で見て体にやさしいルートです。今飲んでいる薬のやめ方・続け方に迷ったら、自己判断せず、必ず専門家に相談してください。
※本記事は特定の商品をすすめたり、薬の効果効能を保証したりするものではありません。薬の選択・使用は、必ず薬剤師や医療機関にご相談ください。
こんな便秘は要注意(受診の目安・レッドフラッグ)
ここは、この記事で最も大切なパートです。便秘の中には、セルフケアではなく医療機関(消化器内科など)の受診を優先すべきものがあります。 腸の形に問題が起きる「器質性便秘」(大腸がんなどを含む)を見逃さないために、次のサインを必ず確認してください。
次のような「危険信号(レッドフラッグ)」に当てはまる場合は、自己ケアを続けず、消化器内科などを受診してください(出典: I&T胃腸と脳のクリニック「便秘が続くのは大腸がんのサイン?受診の目安」/松島病院「こんなときは大腸内視鏡検査を」/くりた内科・内視鏡クリニック)。
- 血便が出る・便に血が混じる
- 便が急に細くなった
- 原因不明の体重減少、貧血を指摘された
- 強い腹痛が続く、強い嘔吐を伴う
- 便秘と下痢を繰り返す、急に便通が大きく変わった
- 排便しても残便感が強い
- 50歳以上で新たに便秘が出てきた、大腸がんの家族歴がある
- 市販薬を使っても改善しない、2週間以上続く
薬剤師トレーナーの視点では——これらは「運動や生活習慣で様子を見てよい便秘」と「専門的な検査が必要な便秘」を分ける、大切な境界線です。とくに血便・急な便通の変化・原因不明の体重減少は、迷わず受診してほしいサイン。便秘は身近な不調だからこそ油断されがちですが、隠れた病気のサインのこともあります。少しでも不安があれば、自己ケアより受診を優先してください。これは遠慮するところではありません。
繰り返しますが、本記事は診断・治療を目的とするものではありません。「いつもと違う」「悪化している」と感じたら、迷わず医療機関へ。
よくある質問(FAQ)
Q. 運動はどれくらいで効果が出ますか?
A. 感じ方には大きな個人差があり、「何日で出る」と断定はできません。すぐ変化を感じる方もいれば、習慣にして数週間で少しずつ整う方もいます。「即効で必ず出る」とうたう情報には注意し、まずは無理なく続けることを優先してください。2週間以上続く・悪化する場合は受診を検討しましょう。
Q. 即効性のある方法はありますか?
A. 朝起きてからの水分→朝食→トイレという流れは、胃結腸反射を利用しやすく、比較的取り入れやすい習慣です。お腹の「の」の字マッサージや軽いウォーキングをきっかけに動きやすくなる方もいます。ただし効果には個人差があり、確実に出る方法ではありません。
Q. 朝と夜、どちらに運動するのがいいですか?
A. どちらでも構いません。朝の散歩は排便リズムづくりと相性が良いとされ、夜のストレッチや「の」の字マッサージはリラックスして腸をゆるめるのに向きます。続けやすい時間を選んでください。
Q. 便秘薬を使いながら運動してもいいですか?
A. 一般的には差し支えないと考えられますが、今お使いの薬や体調によります。とくに刺激性下剤を長く常用している場合や、やめ方に迷う場合は、自己判断せず薬剤師や医療機関にご相談ください。運動・食事・習慣を整えながら、薬との付き合い方を見直していくのが安全です。
Q. 妊娠中・産後でもできますか?
A. 妊娠中・産後は体の状態が大きく変化します。軽いウォーキングや無理のない範囲のケアが選択肢になることもありますが、事前に必ず医療機関へ相談してください。ツボのなかには妊娠中に注意が必要とされるものもあります。
Q. ヨガとウォーキング、どちらがおすすめですか?
A. タイプによります。運動不足の弛緩性タイプはウォーキングなどでしっかり動かすのが向きやすく、ストレスが背景のけいれん性タイプは、ゆるめるヨガや深呼吸が向きやすいとされます。両方を生活に合わせて組み合わせるのもよい方法です。
Q. 毎日やってもいいですか?
A. 痛みや不調のない範囲であれば、毎日続けて差し支えないと考えられます。むしろ続けることが大切です。ただし体調がすぐれない日は無理をせず休み、痛みが出たら中止してください。
まとめ|「動かす・整える・無理しない」で、自然に整う腸へ
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- 便秘は回数だけでなく「快適に出せない」状態も含む。自分の感覚を基準に。
- 運動は蠕動運動・自律神経・血流・腹圧・腸内環境の経路で腸の動きをサポートするとされる。
- 便秘には弛緩性・けいれん性・直腸性のタイプがあり、けいれん性は強い刺激を避けてゆるめるのが基本。
- 運動はウォーキング・お腹ひねり・体幹・ヨガ・「の」の字マッサージを、呼吸を止めず・痛くない範囲で。
- ツボは“あと一押し”のセルフケア。効果は断定できず、リラックスのきっかけとして。
- 土台は食物繊維(水溶性・不溶性)・水分・朝食と胃結腸反射・便意を我慢しないこと。
- 下剤はまず生活習慣から、薬は順序を守って・自己判断の連用は避ける。迷ったら専門家へ。
- 血便・急な便通変化・体重減少などレッドフラッグがあれば、受診を最優先。
- 効果の感じ方には個人差があり、過度な期待は禁物。続けられることが一番の価値。
便秘は、多くの方が抱える身近な悩みです。まずは「朝の一杯の水とウォーキング」「夜の“の”の字マッサージ」など、できそうな1つから今日始めてみてください。
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主な参考・出典
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-001.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」(辞典) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/food/ye-016.html
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレッチングの実際」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-04-007.html
- 慢性便秘症診療ガイドライン2017(南江堂) https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524255757/
- 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症(南江堂) https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524210053/
文責
白木 勝也
RBDジム オーナー・トレーナー
東大薬学部卒・薬剤師国家資格保有。熊本市南区を拠点に、理論に基づいた「リバウンドしにくい設計を目指したメソッド」で多くの女性のボディメイクをサポート。